ザウバーの新人ドライバー、シモーナ・デ・シルベストロをバックアップする原子力産業が、2015年のレースシートに向けて彼女を強力にプッシュしている。
スイスの新聞『Blick(ブリック)』が伝えたもので、同紙は、先週デ・シルベストロが伊フィオラノで行った初F1テストの舞台裏を明かしている。
デ・シルベストロは25歳のスイス人。米インディカー・シリーズを辞めてザウバーに入団、「育成ドライバー」として初仕事が先週末の走行だった。フィオラノは、ザウバーにエンジンを供給しているフェラーリ社所有のプライベート・コースである。
ザウバーでは、6月にも同じく2年落ちのマシンを使って、今度はスペインのバレンシアでテストを行うとしている。
それだけではない。『Blick(ブリック)』によると、デ・シルベストロのテストは少なくとも10日間もの予定が組まれ、中でも8月には、アメリカGPの舞台オースチンに遠征するという。
新人ドライバーに対してこれほど手厚いサポートも近年めずらしいが、いったい金はどこから出るのだろうか?答えは、再生可能エネルギーだ。
当サイトでは今週、デ・シルベストロの支援プロジェクトを率いているのはイムラン・サフィウラという裕福なインド人実業家だと報じた。サフィウラは昨年、デ・シルベストロが乗ったインディカーチーム、KVレーシングにも資本参加した。
サフィウラはザウバーから2年落ちのマシンを購入。チームの施設を借りて作業時間に金を払い、マシンを白・青・緑の三色に塗り直している。
フィオラノを走行するマシンの車体には「クリーン・エア・エネルギー」や「ハイブリッド」といった文字が躍っていたほか、プロジェクトの鍵を握る企業のロゴも見られた。
そのひとつが、エンタジーだ。同社はルイジアナ州ニューオーリンズに本拠を置く電力会社で、原子力を含む40以上の発電所を稼働している。
もう一社は、フランスに本社がある多国籍企業にして原子力発電で世界をリードする、アレヴァだ。
『Blick(ブリック)』は、デ・シルベストロの2014年活動資金を300万ドル(約3億600万円)以上と見積もっている。
「われわれはザウバーとのコラボによるプログラムに投資している」と語るのは、デ・シルベストロのマネジャーでもあるサフィウラだ。
「このマシン(カラー)は、私の希望でデザインされたものだ」
「クリーンなエネルギーを前面に押し出しつつ、それをクルマの走りにつなげたくてね」と、サフィウラは言う。「自動車の将来はハイブリッドにある。それはまさしく今、F1が(新規則で)実践していることだよ」
『Blick(ブリック)』は、デ・シルベストロを2015年のF1グリッドに送り込むのがサフィウラの目標であることは明らかと伝えている。ただ、これには3つの条件が付く。
ひとつは、F1参戦に必要なスーパーライセンスの取得。ふたつめは約2,500万ドル(約25億5,000万円)というデ・シルベストロの参戦資金をスポンサーが供出できるか。
最後は、ザウバーに在籍する他ドライバーだ。エステバン・グティエレスにはメキシコ系企業が付いているし、チームの「救命措置」に伴って契約したロシア人ドライバー、セルゲイ・シロトキンの存在もある。さらにテストドライバーのギド・ヴァン・デル・ガルデは米ファッションブランド、マグレガーが支援している。