元F1ドライバーのニック・ハイドフェルドが、現在参戦しているフォーミュラEや、自身のF1キャリアについて語った。
その中で、ハイドフェルドはF1から耳をつんざくような大音響が失われたことを嘆いている。
現在、まったくエンジン音を発生しないフル電動フォーミュラカーによるフォーミュラEシリーズに参戦しているハイドフェルドだが、大音響のエンジン音はF1にとっては重要な構成要素のひとつだと主張している。
■F1には鳥肌が立つような音が必要
「僕が走っていたころのF1を思い起こせば、今でも毎分2万回転のエンジンがかなでる大音響が聞こえてきて鳥肌が立つ思いがするものだよ」
かつてBMWやウィリアムズで活躍した37歳のハイドフェルドは、『Frankfurter Allgemeine Zeitung(フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング)』に次のように続けた。
「あの音はF1では重要なものなんだ。それはF1のDNAの一部だし、ああいう音がもう聞かれなくなったのは残念だよ」
「今では、ツーリングカーの音のほうがもっと大きいんだからね」
■フォーミュラEにはペイドライバーはいない
だが、音の問題に関してF1とフォーミュラEを比較することはできないとハイドフェルドは主張。この2つのシリーズについて比較できることはほとんどないと次のように続けた。
「(フォーミュラEのクルマは)重さが900kgをほんの少し下回るだけだし、予選では300馬力、決勝ではほぼ180馬力に制限されているからね」
「加速、コーナリング性能、ブレーキング、何をとってもF1と比較できるようなものはないよ」
だが、フォーミュラEにも自慢できることがあるとハイドフェルドは主張している。それはドライバーの技術だという。
「もちろん、F1にもトップドライバーが大勢いる。だけど、それ以外には資金をたくさん持ち込めたというだけのドライバーだっている」
「そういうことは僕たちのところにはない。フォーミュラEのドライバーは、その技術によって採用されているんだ」
■最も印象的だったF1カーはテストドライバー時代のマクラーレン
2000年にF1デビューし、以後10年以上に及んだ自身のキャリアを振り返ったとき、ハイドフェルドにとって最も印象的だったクルマは1998年にミカ・ハッキネンがF1チャンピオンに輝いたときのマクラーレンのMP4-13だったという。
「そのとき僕は(マクラーレンの)テストドライバーだったんだけど、あのクルマは素晴らしかったよ」とハイドフェルド。
「バランスは素晴らしくよかったし、パワーだってすごかった。すぐにマシンと一体となったような感覚を得ることができたよ」
■自分のF1キャリアには悔いが残るとハイドフェルド
才能の高さでは定評のあるハイドフェルドだが、F1現役時代には180レース以上の出走経験を持ち、表彰台には13回上っている。だが、優勝経験は一度もない。
ハイドフェルドは、自分のF1キャリアに関して心残りがあるのは事実だと認め、次のように続けた。
「そうだね。特に、(F1キャリアが)終わってすぐのころはものすごくつらかったよ」
「2011年シーズンの中盤にロータスを離脱することになったんだけど、そんなふうになるなんて思っていなかったし、僕のF1キャリアが終わる最後のレースに向けて備えたりなどしていなかったからね」
そう語ったハイドフェルドは、次のように付け加えた。
「あれはつらかったし、乗り越えるのには時間もかかったよ。でも、結果として、そのことでもっと強くなれたと思っているけれどね」