先週末に行われた2015年F1第2戦マレーシアGPでは、開幕戦オーストラリアGPで一度も走行することができなかったマノー・マルシャのF1カーがついにコース上にその姿を現した。
だが、マノー・マルシャでは2台のクルマのうち28のカーナンバーがふられたウィル・スティーブンスのクルマは予選にも決勝にも出走することができず、ロベルト・メリーのクルマ1台だけでの戦いとなっていた。
マノー・マルシャでは、スティーブンスのクルマには予選前に「燃料システム」に問題が発生。その後決勝までにその修理ができなかったことにより、メリーのクルマのみの走行となったのだと説明している。
だが、F1関係者のうわさによれば、どうやらその話には裏がありそうだ。
■昨年度の賞金受け取りには出走が必須だったマノー・マルシャ
マノー・マルシャがオーストラリアGPでまったく走行できなかったことを受け、管理団体であるFIA(国際自動車連盟)とF1最高責任者であるバーニー・エクレストンは、仮にマレーシアGPでも走行できないようなことになれば、相応の処分の対象となると警告を行っていた。
マノー・マルシャは、昨年経営破たんに陥ったものの、ジュール・ビアンキがモナコGPで9位に入賞したことにより2ポイントを獲得していた。これにより、2014年のチーム別ランキングも9位となっていたが、今年も引き続き参戦することができれば、それによるばく大な賞金を得る権利が発生する。
このため、オーストラリアGPで2台とも走行できなかったときには、マノー・マルシャは最初から本当にレースを続けるつもりなどはなく、その賞金の支払いを受けることだけを目的としてクルマをサーキットに持ち込んだだけではないかとうわさされていた。
無事に賞金の支払いを受けるためには、なんとしてもマレーシアではコース上にF1カーを送り出す必要に迫られたマノー・マルシャ。しかし、最終的には1台だけが予選、決勝への出走を果たした形に終わっている。
■マレーシアでも2台を走らせる能力がなかった?
だが、実際のところ、チームには最初から一度に1台を走らせる能力しかなかったのではないかとのうわさがささやかれている。
『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』のミハエル・シュミット記者は、それは同チームが搭載する昨年仕様のフェラーリエンジンを稼働させるために必要なソフトウエアが一式しかないためではないかと推測。そのために、マノー・マルシャは最初から一度に2台を同時に走らせることができない状態だったというわけだ。
しかし、マノー・マルシャではFIAやエクレストンの手前それを正直に発表するわけにはいかないため、1台に故障が発生し、その修理が間に合わなかったという形で体裁をつくろったのだろうという。
マノー・マルシャのチーム副代表であるグレアム・ロウドンは、そうしたうわさは「ナンセンス」だと否定している。
■マノー・マルシャのF1チームとしての資質に疑問の声
だが、『Speedweek(スピードウィーク)』も、現時点でのマノー・マルシャはとてもF1チームだとは呼べないような状態だと指摘。イギリスのディニントンにある同チームのファクトリーで作業にあたっているスタッフは、わずか30名ほどしかいないと報じている。
さらに、2015年にF1復帰を目指していたマノー・マルシャは当初昨年型のF1カーでの出走を希望していた。だが、フォース・インディアがこれに反対したために、急きょ昨年型のF1カーを2015年のレギュレーションに合わせて改造を行うしかなかったという経緯がある。
マノー・マルシャの復帰に反対していたフォース・インディアのチーム副代表ロバート・ファーンリーは、F1関係者の間でささやかれているマノー・マルシャに関するうわさは確かにその通りだとし、1台だけを走らせたのはマノー・マルシャの「作戦」であったことは間違いないと語っている。
マレーシアGPの舞台となったセパン・インターナショナル・サーキットの責任者であるラズラン・ラザリも、ここまでのマノー・マルシャの動きは「冗談」にしか過ぎないと、『AFP通信』に次のように語った。
「準備ができていないのなら走る資格などないよ。参加しないで欲しいね」
「これは、F1を笑いものにするものだと私は思うよ」とラザリは付け加えた。