今季F1でいちばんの貧乏クジを引いたドライバーといえば、ロベルト・メリー(マノー・マルシャ)だ。彼は、もっとも遅いマシンに乗る、もっとも遅いドライバーのレッテルを貼られてしまった。
彼が9日(土)の予選で計測した1分32秒038は、サポートレースとして行われた下位カテゴリーGP2の予選に照らしても最下位のタイムだ。
セッション後、「屈辱だ」とスペイン系のメディアに語ったメリー。
「コーナーで思うようなスピードを出せないんだ。マシンに合わせて走るしかない。やってられないよ」
周回遅れを含め、すべてのGP2ドライバーの方がメリーより速いのだ。F1に速さが求められるのは当然だろう。
バーニー・エクレストンは取り急ぎ、より音圧が高くパワフルで、運転しにくいマシンを求めている。だがF1でもっとも権力を持つ男も、できることは限られると元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーは指摘する。
エクレストンが英ビギン・ヒル空港に持つ建物で近日中に、F1戦略グループの会合が開かれる。規則変更を話し合うためだ。ベルガーは、これに懐疑的である。
「彼らは合意できたためしがない」とオーストリア『APA通信』に語るベルガー。「だってそうだろう。みんな自分の利益しか考えないのだから」
「いま、F1もファンも必死に改善を求めている。そろそろプロの独裁者に出番を求めたいところだね」
戦略グループは大手チーム、エクレストン、そしてFIA(国際自動車連盟)で構成されている。しかし、このメンツで将来の方向性を決められるかどうか疑わしいとベルガーはいう。
「一回のミーティングでまともな決定が最後に下ったのは、いつのことだろうか」とベルガー。彼は、同じく今のF1に不満を抱えるレッドブル社主ディートリッヒ・マテシッツにごく近い人物だ。
「誰かがはっきりとした決定を出さねばならない。バーニー(エクレストン)には過去の実績がある。以前のように、その手腕を発揮してほしいものだ」
さらにベルガーは、FIA会長ジャン・トッドの責任も指摘する。彼のおかげもあってレッドブルは苦労している。
2013年までF1のタイトルを総なめにしてきたレッドブルは今、ルノーと共倒れの状態にある。「何が悲しいって、(レッドブルには)他にこれといった選択肢がないのだ」
そこでベルガーは、FIAの必要性を次のように説いている。「チームに競争力のあるエンジンを与えてやってほしい。でないとF1を戦う意味などなくなってしまう」