トロロッソのチーム代表であるフランツ・トストが、F1サーキットで使用される作業車の安全問題についてはもっと検討を行うべきだとの考えを示した。
昨年、鈴鹿サーキットで開催されたF1日本GP決勝でコース脇の作業車に激突したジュール・ビアンキ(マルシャ)が、その後9か月に及ぶこん睡状態を経て今年7月に亡くなった。
レース中の事故が原因でF1ドライバーが死亡したのは、1994年のアイルトン・セナ以来のことだ。
だが、トストは、昨年のビアンキの事故は、作業車と激突するという特殊なケースであり、こうした作業車に関する安全性についてはまだ十分に対策がとられていないと主張している。
トストは、ドイツの『Auto Bild(アウト・ビルト)』に次のように語った。
■作業車の下に潜り込まない対策が必要
「作業車自体にはまだ問題が残されている。ヴァーチャルセーフティカーが導入されているかいないかにかかわらず、仮にクルマのサスペンションが壊れていたり、あるいはパンクをしていたりすれば、F1カーがコースオフしてしまう可能性があるからね」
「そして、今の作業車の形状や高さを考えれば、もしF1カーがその下に潜り込むようなことになれば深刻なけがを負うリスクは常にあるんだ。もっと低速でクラッシュしたとしてもね」
「私は、ミハエル・シューマッハとともに1994年に発言していたんだ。こうしたもの(作業車)は危険だし、それらにもっと安全対策が施されるべきだとね」
トストはそのためのひとつの案として次のような提案を行った。
「作業車の周囲にはガードレールが必要だよ。そうすればF1カーが下に潜り込むのを避けることができるだろう。頭部の深刻なけがを避けるためには、それが唯一の方法だよ」
■今は作業車を見るとスピードを下げるとF1ドライバー
だが、もうひとつの方法は、ドライバーたちがもっと用心深くすることかもしれない。統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が行った鈴鹿の事故調査報告によれば、ビアンキは、黄旗が二重振動されていたにもかかわらず、悪天候の鈴鹿においてあまりにもスピードを出して走行していたことが明らかとなっていた。
ビアンキの後任として、今季はマノー・マルシャと呼ばれることになったチームでステアリングを握るロベルト・メリーは、6月に行われたフォーミュラ・ルノー3.5シリーズのレースを振り返りながら次のように語った。
「ハンガリーでのワールドシリーズに出ていたんだけど、1台のクルマが高速コーナーでクラッシュしたんだ」
「作業車がそのクルマの撤去のために出てきたんだけど、僕はその状況と黄旗を見た瞬間にスピードを下げたよ。以前なら、アクセルを緩めたりはしなかったかもしれないけどね」