2015年に死去したジュール・ビアンキの遺族が、訴訟を起こす理由を説明した。
ビアンキは、2014年10月に行われたF1日本GP決勝で雨の中コースアウト。ランオフエリアで作業中だった重機に激突して頭部に重傷を負い、意識が戻らないまま翌年7月に25歳で亡くなった。
この事故の責任を問い、F1を統括するFIA(国際自動車連盟)と、商業権者のFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)、ビアンキが所属していたマルシャ(現マノー)を相手に訴訟を起こすことをビアンキの遺族が26日(木)に発表した。
■ドライバーに責任があると結論づけた内部調査は受け入れられない
父のフィリップは、訴訟を起こす理由について、十分な「答え」を得られなかったからだと『Radio Monte Carlo(ラジオ・モンテカルロ)』に語っている。
「私たちは、過ちが起きたのだと認識するに至った」
「気が付いた人もいるだろう。(ルール)変更があったのだから」
ビアンキの事故を受け、コース上に重機が出て作業する場合は、大きな減速を義務付けるバーチャルセーフティカーが2015年から導入されている。
「しかし、スピードを出しすぎていたジュールに責任があるとしたFIAの内部調査には納得できない」
「私たちはこのまま生きてはいけない。この悲劇は私たち家族を打ちのめした。難しいコンディションだったのに、彼が悪かったと言われて、どうして受け入れられる?」
「あの事故は完全に避けられたものだ。だから、ほかの現役ドライバーのためにも、こうしたいと思った」
フィリップは、内部調査では不十分だと話している。
「例えば私が誰かを死に至らしめたら、友人による内部調査を立ち上げて、“私の責任ではなかった”と言うことなどできない。間違いを犯したら、その代償を支払うという正義が果たされるべきだ」
■訴訟は苦しみを長引かせるだけ
3度のF1王者で、安全性向上の草分け的存在でもあるジャッキー・スチュワートは、訴訟を起こすのは賢明ではないと『Times(タイムズ)』紙に話している。
「遺族にとっては非常に悲しいことだし、心からの同情しかない。しかし、訴訟を起こすのが進むべき道だとは思えない」
「遺族が味わう苦痛は、いっそう長引くだろう。痛みを消すことにはならない」
また、スチュワートはレースの危険性についても話している。
「リスクがあることは全ドライバーが分かっている。ピンポンではないんだ」
「例外的なアクシデントが起きる可能性は常にある。それを受け入れなければならない」