10日(木)からバーレーンで今年2回目のF1プレシーズンテストが行われているが、そこにメルセデスが持ち込んだ非常にユニークなF1マシンが大きな話題を呼んでいる。
バーレーンに持ち込まれたメルセデスの2022年型F1マシンは、サイドポンツーンを小さく絞り込み、レギュレーションで定められている耐クラッシュ構造部をまるで翼のような形状にしてそこにバックミラーを取り付けている。
F1モータースポーツ担当マネジングディレクターのロス・ブラウンも、このコンセプトは「過激」なものだと次のように語っている。
「非常に極端にレギュレーションを解釈したものであり、多くの議論が起こるのは避けられないだろう」
しかし、その一方で、ブラウンはこのアイデアは「印象的」であり、F1がいかに革新的なものであるかを示す「素晴らしいもの」だとも述べている。
「ここまでのところ、私はレギュレーション上は問題ないと思っている。だが、もちろん、ほかのチームがFIA(国際自動車連盟)による検討が必要となる異論を唱えてくるかもしれないし、そうなれば問題を抱えることになるだろう」
こうした中、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』は、レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーが次のように語り、正式に抗議を行う可能性を示唆したと報じた。
「新しいメルセデスはレギュレーションの精神に反しているよ。我々から見れば、いくつかのパーツは合法ではないね」
「これらはミラーのマウントではなく、ふたつのウイングだ。また、上部には垂直にバッフル(整流板)が組み込まれている。それらはミラーのマウントとは何の関係もないものだ」
「我々の観点からすれば、メルセデスは一歩行き過ぎているよ」
ところが、『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』の記者はこのホーナーの発言は事実だと抗議したものの、レッドブルとホーナーは、自分はこのような発言は行っていないと主張している。
レッドブルの広報担当者は、「クリスチャン・ホーナーは、メルセデスのクルマに関するインタビューには一切応じていない」と語り、ホーナーも次のようにコメントしている。
「自分がするべきだったコメントを読んで少しばかり驚いたよ。だが、そうすることにしよう」
しかし、フェラーリのチーム代表であるマッティア・ビノットも、レッドブルと同じようにメルセデスのミラーマウントの処理には大きな疑問を感じているようだ。
「我々は以前から、ミラーは空力的な機能を果たすべきでないと主張してきた。ミラーは後方を見るためにのみ使われるべきものだからね」
そう主張したビノットは次のように付け加えた。
「宇宙船のように見えるミラーを設計するチームにはいて欲しくない。F1にそれが必要だとは思わないよ」
しかし、メルセデスを率いるトト・ヴォルフ(チームCEO兼代表)は、こうした指摘に対し、自分たちはFIAと緊密な相談を行い、「CADデータを交換」しながら、違法ではないことを確認してもらっていたのだと主張している。
ヴォルフは、次のように続けた。
「革新的なものを持ち込めば、今回のような議論が巻き起こることがあるのは明らかだ。それが予想されたからこそそうしてきたんだ」
「しかし、FIAとF1は、スポーツの精神に則って真摯に対処してくれると思っているよ」
一方、ホーナーは、レッドブルでは来週末に同じバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われる2022年F1開幕戦バーレーンGP(20日決勝)に、より大きな改良パーツを持ち込むつもりだと示唆している。
「ここに持ち込んだマシンは、バルセロナのときからあまり変わっていない」
そう語ったホーナーは次のように付け加えた。
「来週はかなり違うものになるよ」
2021年のF1チャンピオンであるマックス・フェルスタッペンも次のように語っている。
「もちろん、僕たちもアップグレードを手にすることになる。今ではないけれど、やがてね」