レッドブル首脳のヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)が、マックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスにチームオーダーを出すことは考えていないと語った。
先週末にバクーで開催された2023年F1第4戦アゼルバイジャンGPでは、レッドブルのペレスが勝利し、現在ランキングトップに位置しているチームメートのフェルスタッペンは2位に終わった。
ペレスは、スプリントでも勝利を飾っており、この結果、3レースを終えた時点で15ポイント差となっていたフェルスタッペンとの差は6ポイントにまで縮まっている。
レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、「チームに損害を与えない限り、彼らはお互いに争うことができる」と語っており、今後フェルスタッペンとペレスの2人が2023年のF1ドライバーズタイトルを争う展開となってきそうだ。
■ペレスの勝利はセーフティカーの導入タイミングのおかげ?
しかし、実際にそうなるとは考えていない者もいるようだ。
かつてレッドブルに所属していたことがある元F1ドライバーのロバート・ドーンボスは、母国オランダの『Ziggo Sport(ジッホ・スポルト)』に次のように語っている。
「レース後、ホーナーが無線でマックスに言った言葉は、メキシコのファンにとってはうれしいものではなかった」
「彼は、それはセーフティカーによる幸運だったのだとほのめかしていたんだ」
実際のところ、ドーンボスと同じオランダ出身ドライバーであるフェルスタッペンは、セーフティカー導入前後のペレスと自分のピットストップのタイミングが適正なものだったのかどうかを再検討するようレッドブルに促していた。
■デ・フリースのクラッシュでのセーフティカー発動は予想していなかった
これに関してホーナーは、チームとしてはニック・デ・フリース(アルファタウリ)がクラッシュした際にセーフティカーが導入されることになるとは思っていなかったのだと次のように語っている。
「4つの車輪はすべて付いたままだったし、彼はバリアにぶつかっておらず、エンジンも動いていた」
「彼はマシンをバックさせて、そのまま走り続けるように思えたんだ」
しかし、実際には、デ・フリースのマシンは左フロントサスペンションが完全に壊れてしまっており、自力走行が可能な状態ではなくなっていた。このため、FIA(国際自動車連盟)のレーススチュワードたちは、そのマシンの撤去のためにはセーフティカーの導入が必要だと判断したのだ。
■ペレスとの差を縮められなかったフェルスタッペン
そのほんの少し前にピットインしてタイヤを交換したフェルスタッペンはこれにより順位を下げてしまったが、セーフティカー導入時にピットインしたペレスはタイムをロスすることなくコースに戻り、ここでフェルスタッペンに代わってトップに立っていた。
その後、ペレス、シャルル・ルクレール(フェラーリ)に次ぐ3番手でレースリスタートを迎えたフェルスタッペンは、すぐにルクレールをオーバーテイクして2番手に上がったものの、先頭を走るペレスとはすでに2秒以上の差が開いてしまっており、結局最後までそのギャップを縮めることはできなかった。
これについて、マルコはレース後に次のように語っている。
「我々の2人のドライバーはどちらも素晴らしいし、それぞれの強みを持っているんだ。セルジオは市街地サーキットで、そしてマックスは伝統的なサーキットでね」
■これからもペレスとの戦いは続くとフェルスタッペン
今季ここまでの4レースで2勝ずつをあげ、勝利数では並んだフェルスタッペンとペレスだが、現F1チャンピオンであるフェルスタッペンは、今後もこの2人による戦いが続いていくだろうと次のように語っている。
「僕たちは残りのシーズンも戦い続けることになるだろうね。だけど、それは普通のことさ。僕たちはこれまでの人生でずっとそうしてきたんだ」
■フェルスタッペンは来季リカルドをチームメートに希望?
しかし、元F1ラルフ・シューマッハによると、フェルスタッペンはペレスがチームメートであることをあまり歓迎しておらず、2024年にはペレスの代わりにかつてのチームメートであるダニエル・リカルドをレッドブルが起用することを望んでいるという噂もあるという。
現在ペレスはレッドブルと2024年までの契約を結んでいる。しかし、だからと言って2024年のシートが完全に保証されているわけではないのは、これまでの多くの例を見ても明らかだ。
「僕の目から見れば、フェルスタッペン側が新しいチームメートを欲しがっているのは明らかだよ。いたるところでこうした噂が聞こえてくるんだ」
■今年のチャンスをモノにしたいペレス
母国ドイツのテレビ局『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』にそう語った47歳のラルフ・シューマッハは、だからこそ、今年のペレスは絶対にタイトルをとろうと狙っているのだと次のように続けている、
「これは、ペレスがレッドブルでの時間が終わることを知っているのが問題だと思う。だから、彼は勝利し、自分にもタイトルをとる権利があることを示すために、懸命に戦っているんだ」
「彼は次のチャンスがあるかどうかはわからないと思っているんだ。ルイス・ハミルトン(メルセデス)を見れば、それがいかに早く消えさってしまうかがわかるしね」
「セルジオが今さらに自分本位になっているのはそれが理由だよ。そして、自分本位ということに関してはマックス・フェルスタッペンも文句は言えないよ」
そう語ったラルフ・シューマッハは、次のように付け加えている。
「しかし、彼(フェルスタッペン)のチームメートであることは間違いなく簡単なことではないよ。私なら間違いなくそうなりたくはなかっただろう」
■チームオーダーは考えていないとマルコ
こうした中、レッドブルとしては、今のところ、この2人の戦いに介入するつもりはないようだ。
「我々は幸運な状況にある。アロンソ、ルクレール、そして2人のメルセデスドライバーが3位争いを繰り広げているわけだからね」
先週末のバクーで80歳の誕生日を迎えたばかりのマルコは、母国オーストリアの『ORF』にそう語ると、次のように付け加えた。
「常に彼らは一進一退の状況にある。我々がかなりリードできているのはそのためだ。しかし、まだ19レースもあるし、チームオーダーは考えていないよ」