マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、先週末にバクーで開催されたF1アゼルバイジャンGPで起きた出来事を通じて将来のライバルに対して「心理的打撃」を与えようとしていたのかもしれない。
そう考えているのは、ロシアのF1解説者であるアレクセイ・ポポフだ。
■スプリント後にラッセルを激しく非難したフェルスタッペン
アゼルバイジャンGPでは今季最初となるスプリントが開催されたが、そのスプリントではスタート直後に3番グリッドからスタートしたフェルスタッペンと4番グリッドスタートのジョージ・ラッセル(メルセデス)が激しい順位争いを展開し、コーナーでラッセルがフェルスタッペンのマシンに接触するアクシデントが発生してしまった。
その後、一度は先行を許したラッセルをオーバーテイクして再び3番手に浮上したフェルスタッペンだったが、ラッセルとの接触によってマシンがダメージを受けていたことから、前を走るフェラーリのシャルル・ルクレールをとらえることはできず、3位フィニッシュに終わってしまった。
そして、フェルスタッペンはレース後にラッセルのことを放送禁止用語を用いて「愚か者」とののしっていた。
さらに、フェルスタッペンは母国オランダのメディアに取材された際も、自分と同じ25歳のラッセルのことを「ジョージ姫」と呼び、揶揄していた。
■それほどひどい接触ではなかったとラッセル
この一件についてレース後に質問されたラッセルは、バクーで次のように答えている。
「あれは単純なレーシング・インシデントだったし、スタートではよくあることなんだ。公の場であんなことを言うのは、彼の評判のためにはならないと思うよ」
「いや、謝ってもらう必要はないよ。でも、彼はF1選手権のリーダーであり、2回チャンピオンとなっているし、素晴らしいやつで、素晴らしいレーサーなんだ。ほかに何を言えばいいか、僕にはわからないよ」
実際のところ、ラッセルにはあの接触でフェルスタッペンがあれほどの怒りを示した理由がよくわからないようだ。
「正直なところ、リプレイでそれ見たとき、僕はもっとすごかったんだろうと予想していたんだ」
そう語ったイギリス出身のラッセルは、次のように付け加えた。
「少し接触はあった。それは1周目にはよくあることさ。だけど、それほどではなかった。もっとすごかったのかと思っていたんだ。正直な話ね」
■これはフェルスタッペンによる「心理戦」?
しかし、ポポフは、フェルスタッペンがラッセルに対して攻撃的な姿勢を示した裏には「心理的」要素があると感じているようだ。
「強いレーサーは、野生の肉食動物のように、すぐに自分のテリトリーを示すんだ」
「ルイス(ハミルトン)は下り坂だが、ラッセルは今まさに台頭してきており、マシンがよくなり次第すぐに手強い相手になる。だから、私が思うに、マックスは彼に自分を恐れさせたいと思っているんだ。彼が次のことを考えるように、釘を刺しておくことが必要だとね」
「私はラッセルをかばっているわけではないよ。ぶつかったのは本当に彼に落ち度があったからね。しかし、私から見れば、マックスは彼が示したほどには怒ってはいなかったと思うよ」
そうコメントしたポポフは、次のように付け加えた。
「私が間違っているかもしれない。だが、将来に向けた心理戦の要素があるように見えるんだ」
■ラッセルの言うように単なるレーシング・インシデントだったとアルバース
一方、フェルスタッペンと同じオランダ出身の元F1ドライバーであるクリスチャン・アルバースは、バクーで起きた接触は、ラッセルが言うように「単なるレーシング・インシデント」に過ぎないものだったと考えているようだ。
44歳のアルバースはオランダの『De Telegraaf(テレグラーフ)』紙に次のように語っている。
「もし私がマックスだったら、そのまま放っておいただろうね」
「あの週末のマックスについては、少し複雑な思いがあるんだ。というのも、彼は実際のところ以前と比べると少し落ち着いてきているからね」
「今、我々はあのマシンでF1チャンピオンになれると確信しているマックスを見ている。だから、私はラッセルに対してまた攻撃的なところが出てきたのが見られてよかったと思っていたよ」
2005年から2007年にかけてミナルディやMF1レーシングなどでF1通算40戦を戦った経験を持つアルバースはそう語ると、次のように付け加えている。
「だけど、私はラッセルの意見に全面的に賛成だよ。なぜなら、スタートではあらゆるチャンスをつかまなければならないからだよ。これはマックス・フェルスタッペンのショーではなく、F1なんだからね」。