今年のここまでのF1レースにおいて話題となったことのひとつにトラックリミットの問題がある。そして、現在唯一の日本人F1ドライバーである角田裕毅(アルファタウリ)は、そのルールを少し見直す必要があると考えているようだ。
■オーストリアGPではトラックリミットで混乱も
F1のルールでは、マシンをコース外に出して走行することは認められておらず、現在のルールでは4輪全てがコースの限界点を示す白線外に出てしまった場合にはトラックリミット違反と判定されてしまう。
フリー走行や予選においては、トラックリミット違反があった場合にはそのときのタイムが抹消されてしまう。そして、決勝においては、3回トラックリミット違反を犯した場合には警告が出され、そこでまたトラックリミット違反を犯すと5秒のタイムペナルティーが科されることになっている。
実際のところ、今年もレッドブルリンク(第10戦オーストリアGP)の高速コーナーでは多くのドライバーがレース中にトラックリミット違反によりタイムペナルティーを受けることになったほか、全ドライバーがチェッカーフラッグを受けてレースが終了した後にさらにペナルティーが科され、正式順位が変動するという事態となっていた。
■賛否両論あるトラックリミット
F1ドライバーや関係者の中には、このトラックリミット問題に関しては何らかの解決策を講じる必要があると主張している者もおり、F1にとっては頭の痛い問題になっている。
しかし、F1や統括団体であるFIA(国際自動車連盟)は、現時点においては、正しくコース内を走行することがルールで求められていることであり、それに違反したドライバーがペナルティーを科されるのは仕方のないことだという姿勢を保っている。
また、関係者の中には、例えばモナコのようにコースのほぼ全てがガードレールで囲まれているようなサーキットでは誰もがコースをはみ出さないように走行しているわけであり、どのサーキットでもトラックリミット違反を犯さないように走るのがドライバーの義務なのだと主張している者もいる。
■トラックリミットを守るのは簡単ではないとフェルスタッペン
第12戦ハンガリーGP終了後にこの問題について質問されたフェルスタッペンは、どのサーキットでもトラックリミット違反を犯さないように走るのは口で言うほど簡単なことではないのだと主張し、こうしたルールを厳密に適用することの方に問題があるのだと示唆していた。
「もちろん、『それなら白線内にとどまれ』と言うことは誰にでもできるよ」
「もし、それがそんなに簡単なことなら、僕のマシンに乗ってやってみればいいよ」
そう語ったフェルスタッペンは、次のように付け加えている。
「僕は、僕たちみんながバカだとは思わないよ」
このフェルスタッペンのコメントは、少しでも速く走ろうと限界ギリギリに挑戦しようとするドライバーが、トラックリミット違反を犯さないようにすることの複雑さと難しさを浮き彫りにしている。
■ルールはルールだが見直す必要もあると角田裕毅
だが、オーストリアGPの舞台となったレッドブルリンクでは複数回のトラックリミット違反ペナルティーを受けた角田は、その点に関しては自分にも改善の必要があると『Total-Motorsport.com』 に次のように語っている。
「まず、ルールはルールなんです」
「僕はオーストリアで3回も白線を超えるべきではありませんでした。それは僕の問題です」
しかし角田は、この問題に対処するためにはそのルールを変える必要もあるのではないかとも示唆している。
「マシンを白線内にとどめるべきでしたが、同時に、それが難しかったことも事実です。レッドブルリンクのようなサーキットでは、もっと(警告対象回数を)増やすべきだと僕は思っています」
「白線内を走行しやすいサーキットもいくつかあります。しかし、オーストリアやシルバーストンでは、簡単に白線を越えてしまうんです」
3年目のF1シーズンを迎えている23歳の角田はそう語ると、次のように付け加えた。
「縁石を乗り越えたり、前輪を白線の上に置いたりしたような場合にペナルティーを受けるようなルールに変えるべきかもしれません」。