FIA(F1統括団体の国際自動車連盟)の会長を務めるモハメド・ベン・スレイエムが、ルノーやほかのエンジンサプライヤーがアンドレッティ・キャデラックのF1参戦を止めることはできないと主張した。
■F1参戦に向けた最終段階に進んだアンドレッティに逆風?
ベン・スレイエムが率いるFIAは、元F1ドライバーでもあるマイケル・アンドレッティが率いるアンドレッティ・キャデラックのF1参戦申請を正式に承認しており、今後はF1オーナーであるリバティ・メディアとの間で商業的交渉が行われることになっている。
だが、リバティ・メディアや既存の10チームのうち大多数のチームが2025年にアンドレッティ・キャデラックがF1グリッドに並ぶことに反対している。
こうした中、以前はアンドレッティとの間にエンジン供給の仮契約を結び、そのF1参戦に前向きな姿勢を見せていたルノーの状況に変化が現れてきている。
ルノーのワークスF1チームであるアルピーヌでは今年の6月以降大規模なチーム再編成が行われている。
更迭されたオットマー・サフナウアーに代わって現在アルピーヌの暫定チーム代表を務めるブルーノ・ファマンは、ルノーとアンドレッティが交わした事前契約はすでに失効しており、リバティ・メディアがアンドレッティの参戦を正式に承認するまではエンジン供給に関する話し合いは再開されないと語っている。
ルノーエンジン搭載を前提としてF1参戦準備をしていたアンドレッティにとってはこのことが逆風となる可能性も出てきている。
■エンジンメーカーはアンドレッティへの供給を拒否できない
しかし、ジャン・トッド前会長の後任として2021年12月に新FIA会長に選出された61歳のベン・スレイエムによると、カスタマーエンジン契約がなかったとしてもアンドレッティの入札がそのまま無効とされることはないという。
ベン・スレイエムは、オランダの『Formule 1(フォーミュレ1)』誌の最新号に次のように語っている。
「ルールには、誰も彼らを拒否することはできないと記されている」
「もしすべてのサプライヤーがノーと言えば、FIAは誰かを指名する権限を持つ。それは最も少ないチームにしか供給していないサプライヤーになるだろう」
「その場合、我々はその2社からランダムに選び、彼らに供給してもらうことになる」
「それは秘密でもなんでもない。おそらくアルピーヌ(ルノー)とホンダの2社になるだろうし、そのどちらかで決まるだろう。なぜなら、それがルールだからだ」
■最終的にはキャデラック製F1エンジン登場を目指すFIA会長
アンドレッティとGM(ゼネラルモーターズ)傘下のキャデラックが手を組んでいるF1プロジェクトだが、当初キャデラックが自前でF1エンジンを製造することは難しく、当面はほかのエンジンメーカーからカスタマーエンジンを購入して搭載する必要がある。
しかし、ベン・スレイエムは、最終的にはキャデラックのワークスエンジンを搭載することがアンドレッティの目標だと明言している。
「我々もそれを求めている。そして、いずれはそうなるだろう」
そう語ったベン・スレイエムは次のように付け加えた。
「しかし、エンジンは4年や5年で製造できるものではない。だから最初の何年かは、アンドレッティはほかのサプライヤーと一緒に走らなければならないだろう」