FIA(国際自動車連盟)のモハメド・ベン・スレイエム会長がレッドブルリンクでのF1レースが中止される可能性があると警告したことについて、オーストリアGPの主催者は今のところ冷静に受け止めているようだ。
■改善できないサーキットはF1から締め出すとFIA会長
7月初旬に開催されたF1オーストリアGPの舞台となったレッドブルリンクでは、トラックリミット違反が多発する状況となり、それによるタイム抹消の裁定がしばしば遅れるという混乱が起きていた。
そして、2週間前に開催された前戦カタールGPにおいても同じような問題が発生したことを受け、ベン・スレイムは次のように主張していた。
「解決策はサーキットを改善することだ」
「オーストリアでも同じ問題を抱えていた。あそこでは(トラックリミット違反が)1200もあった」
「抵抗している人もいるのは知っている。しかし、正直なところ、もし彼らが(改善を)しなければ、レースはない。そういう単純なことだ。我々はこれを見過ごすわけにはいかないよ」
■FIAと「建設的なコミュニケーションをとっている」とレッドブルリンク
F1チーム首脳たちの多くは、現在のトラックリミット違反によるペナルティーには批判的であり、ベン・スレイエムの姿勢を支持していると伝えられている。
そして、あまりにもトラックリミット違反が多いレッドブルリンクやカタールのルサイル・インターナショナル・サーキットなどは、F1グランプリを開催するにはふさわしくないと判断されてしまうのではないかという現実的な危機感を募らせているようだ。
だが、今のところ、レッドブルリンクは冷静さを保っているようだ。
世界的エナジー飲料メーカーが所有するサーキットの広報担当者は、ドイツの『Speed Week(スピードウィーク)』に次のように語った。
「我々はFIAやFIM(MotoGPなどの二輪レース統括団体)と建設的なコミュニケーションをとっており、すべての要求を満たすために常に努力している」
■FIAはトラックリミット違反監視体制を強化
それと同時に、FIAもオーストリアGP以降、トラックリミット違反に関する裁定が遅れないようにするための対策を強化している。
ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』によれば、スイスのジュネーブに設けられているFIAのモニタールームでは、トラックリミット違反を監視する人員が2倍に増やされているという。
また、問題のあるコーナーや縁石をよりよく監視するための新しいソフトウェアも導入されており、ドライバーがトラックリミット違反を犯した場合、それが即座にFIAのシステムに通知される仕組みになっているようだ。
■それは解決策ではないとベン・スレイエム会長
「スチュワードにはおめでとうと言わなければならないね。なぜなら、彼らがそれを設置したのだからね」
そう語ったベン・スレイエムは、次のように付け加えた。
「だが、それが解決策だろうか? 違うね」。