・TopNewsは日本GP直前、ハースのガレージツアーに参加し、平川亮の案内で現場を取材した
・最少規模ながら4位につけるハースは、機能性重視の現場と小松代表の統率力、一体感が強みと映った
・自前シミュレーター導入が今後の鍵で、後半戦に向けたさらなる伸びにも期待が集まる
F1第3戦日本GP開幕直前の木曜日、TopNewsはハースF1チームのガレージツアーに参加する機会を得た。これまでにもアルピーヌやアストンマーティンなどのガレージツアーに参加してきたが、今回も貴重な現場を取材することができた。
小松礼雄チーム代表が率いるハースは、全11チームの中で最少規模のスタッフ数ながら、鈴鹿サーキットに到着する時点でコンストラクターズランキング4位につけていた。しかも3位の前年王者マクラーレンとはわずか1ポイント差。この人員規模を考えれば、驚くべき結果と言える。
2026年はトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing)をタイトルパートナーに迎え、「TGRハースF1チーム」として関係を強化。アメリカを拠点とするチームでありながら、日本GPでは“凱旋帰国”のような雰囲気も漂っていた。
さらに日本GP直前には、東宝の怪獣映画「ゴジラ」とのコラボレーションを発表。大胆なデザインが話題を呼んでいた。

最少人員でランキング4位、日本企業との連携強化など話題の多いハース。そのガレージ内部はいったいどのようなものなのか。今回のツアーで案内役を務めたのは、なんとハースのリザーブドライバーである平川亮だった。日本語で説明できる人物が良いだろうと配慮してくれ、その場で平川が指名され、我々にとっても予想外の展開となった。

平川は2012年F3王者、2017年SUPER GT・GT500クラス王者、2020年スーパーフォーミュラ2位、そして2022年ル・マン24時間レースでは日本人最年少で総合優勝を達成。さらにFIA世界耐久選手権(WEC)では2022年・2023年と2年連続王者に輝いた実力者だ。F1では2024年以降、マクラーレン、アルピーヌ、ハースと3チームでリザーブドライバーを務めている。
その平川から直接ガレージツアーの案内を受けるという、非常に貴重な機会となった。豊富な経験を持つドライバーの視点で、ハースはどのように映っているのか。
ハースのホスピタリティエリアとガレージには、力強いゴジラのビジュアルが描かれており、日本人として誇らしさを感じる演出となっていた。

ガレージ内部は非常に清潔でF1らしさも十分に感じられる一方、他チームと比較すると過度な装飾や演出はなく、「ザ・F1」といった華やかさよりも、「レーシングチーム」として機能性を重視した空間という印象が強い。限られた人員と予算の中で、やるべきことに集中している姿勢が伝わってきた。
ハースは11チーム中でも最小規模のプライベートチームだ。かつて平川が所属していたマクラーレンは1000人規模と言われるが、ハースはその半分以下、300人未満とされる。ファクトリーはイギリスに置きつつ、フェラーリの拠点イタリア・マラネロでシミュレーターを利用し、さらにトヨタの施設を日本とドイツで活用するなど、複数拠点で分散運営している。小松代表の統率力が重要になることは想像に難くない。

F1日本GPハースのガレージ(C)TopNews
木曜日のガレージでは、2台のマシンのリアカウルが外され、モノコックのスペア準備も進められていた。通常では見ることのできない裏側の作業を見ることができたが、写真撮影は禁止されており、詳細を公開できないのは残念だ。シーズン序盤であり、各チーム・PUの機密が詰まった領域であるため、信頼関係の観点からも詳細な言及は控えたい。
テレビ中継でも映る表側の作業スペースに加え、今回はガレージのボード裏側にも足を踏み入れることができた。狭いスペースでフロントノーズを正面から確認しながら調整を行うスタッフ、その意見に耳を傾け議論を交わす小松代表の姿が印象的だった。平川や帯同スタッフによれば、小松代表のエンジニアとしての判断は非常に的確で、こうした距離感でのやり取りは他チームではあまり見られないという。
少人数だからこそ代表の目が行き届き、チーム全体にリスペクトが浸透している。この一体感こそが現在のハースの強みだと感じた。
筆者自身のレース経験や、長年F1を見てきた経験からも、限られた予算と設備の中で戦うチームは、無理に冒険せず、基本に忠実で扱いやすいマシン特性を重視し、ステップ・バイ・ステップで進めばうまくいく傾向がある。他チームが革新的なコンセプトに挑み、序盤に苦戦するケースも多い中、ハースのようなチームにとって前半戦はポイントを稼ぐ絶好の機会となる。
シーズンが進むにつれて、資金力のあるチームがアップデートを重ねて差を広げていくのが通例だが、それまではハースの存在感が際立つ可能性は高い。今季前半戦は特に注目したいチームだ。
ガレージツアー中、平川が特に注目していたのはピットの位置だった。
鈴鹿サーキットは最終コーナーから1コーナーにかけて下り勾配となっており、ピットロードもわずかに傾斜している。一方でガレージ内部は水平に保たれているため、その境界には微妙な高低差が生じている。
F1ではピットストップ時の停止位置「ボックス」は、進行方向に対してわずかに斜めに設定されており、ドライバーが正確に停止しやすいよう工夫されている。しかし、ハースの位置では右タイヤ付近がちょうど傾斜部分にかかっており、接地感に微妙な違和感が出る可能性があるという。

ドライバーにとってはわずかな段差でも気になる要素であり、メカニックも傾斜の中でタイヤ交換をすることになるため、有利な条件とは言い難い。ただし、ガレージ位置とピットの作業位置はFIAによって割り振られており変更はできないため、与えられた条件で最善を尽くすしかない。
ハースには現時点で自前のシミュレーターがなく、フェラーリの設備を借りている状況だ。そのため平川も十分なテストの機会を得られておらず、今季の実車テストもまだ行っていないという。
FP1での走行については今後発表される予定だが、日本GPではWECカタール戦の延期により急きょ帰国した影響で準備が間に合わなかった。
しかし、小松代表は今夏にもイギリス拠点に最新シミュレーターを導入予定と明かしている。実車データを正確に反映できる環境が整えば、小規模チームであっても後半戦での飛躍は十分に期待できる。

日本GPを終えてハースはランキング4位を堅持。3位マクラーレンとは28ポイント差をつけられたものの、下を見れば、5位アルピーヌと同点6位のレッドブルとは2ポイント差、7位レーシングブルズとは4ポイント差の接戦だ。この3チームはハースよりも規模が大きいものの、アルピーヌは今季からメルセデスPUにスイッチ、レッドブルとレーシングブルズはフォードと組んで自社製PUにスイッチしており、PU側のエンジニアとのコミュニケーションが馴染むまでしばらく時間がかかるはずだ。その点、ハースはフェラーリとのエンジニアリング体制を維持しており、スタッフ間のコミュニケーション、つまり意思疎通という点でも強みがある。

今回のガレージツアーと平川のコメント、そして小松代表への取材を通じて、小規模なハースがなぜ4位につけているのか、その理由が明確になった。ライバルの動向に左右されず、自分たちの強みを理解し、着実に発揮する。そのシンプルな哲学が国も文化も違う人が集まるチーム全体に浸透し、一体感が出ている。
ここにトヨタの力が加われば、さらなる進化も期待できる。無駄を省いたカイゼンを武器に、ハースは今季後半戦に向けてどこまで伸びていくのか注目したい。

F1日本GP大会最高名誉総裁としてご臨席された三笠宮家の彬子女王殿下とハースF1小松代表(C)Haas

ハースF1小松代表とトヨタ自動車の豊田章男会長(C)Haas
