・予選アタックラップ後に意図的にロックアウト状態を誘発し、タイムを稼ぐチームが複数確認された
・エマージェンシーモードは本来マシン保護のための機能だが、予選での使用は安全面でも問題視された
・FIAはパフォーマンス向上を目的としたエマージェンシーモードの使用を禁止し、各チームに通達した
FIA(国際自動車連盟)は今月初めの報道を受け、物議を醸していた予選での“トリック”について、迅速に禁止措置を取った。
ドイツの自動車専門誌『Auto Motor und Sport』やイタリアのスポーツ紙『La Gazzetta dello Sport』など複数のメディアによれば、メルセデスとレッドブルが2026年のエネルギーマネージメント規則の抜け穴を突いていたことが明らかになっている。
当時、各チームは電気エネルギーを限界まで使うテストを行っていた。具体的には、1周の後半までバッテリーの電力をフルに使い続けたあと、意図的にパワーをカットするというものだ。
その結果、マシンの挙動が不安定になったり、MGU-K*が60秒間使用不能になる(急激に減速する)危険な現象が発生していた。
*MGU-K:ブレーキング時のエネルギーを回収し、加速時に再利用する装置。
この問題の核心にあったのが「エマージェンシーモード」と呼ばれる機能だ。
これは本来、バッテリー残量の低下やシステム負荷の増大といった異常時に、出力を自動的に制限してマシンを保護するための安全装置である。通常は、出力が段階的に低下することで、トラブルを未然に防ぐ仕組みとなっている。
しかし今回、一部チームはこの仕組みを逆手に取った。
本来は段階的に出力が下がるはずのところを、最後まで最大出力を維持し、意図的にエマージェンシーモードへ移行させることで、フィニッシュライン直前までフルパワーを引き出していたのだ。
『f1-insider.com』は「最後の数メートルまで最大エネルギーを維持できることで、コンマ数百分の一秒を稼ぐ可能性がある」と報じている。
しかし、この手法には大きなリスクがあった。
アタックラップ*後、エマージェンシーモードに入ったマシンはMGU-Kが約60秒間停止し、直線でも突如減速する。その結果、後続車との間に大きな速度差が生じ、接触や追突の危険性が高まっていた。
*アタックラップ:予選でマシンの性能を極限まで引き出し、最速タイムを狙う周回
こうした状況を受け、4月のインターバル期間中にFIAは断固とした対応に踏み切った。
各チームに対しては、エマージェンシーモードは真に技術的トラブルが発生した場合にのみ使用すべきであると警告が出され、テレメトリー監視*の強化と、不正使用に対するペナルティ適用が通達された。
なお、この機能自体は引き続き合法とされるものの、パフォーマンス向上を目的とした使用は事実上禁止される形となった。
*テレメトリー監視:マシンのデータをリアルタイムで監視する仕組み(・スピード・スロットル開度(アクセルの踏み具合)・ブレーキ圧・バッテリー残量・MGU-Kの出力や回生量・エンジンの温度や回転数など、ほぼすべての挙動が分かる)
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