フェラーリのフェリペ・マッサが、シルバーストン・サーキットで開催されるイギリスGP(7月8日決勝)に向けて意気込みを語った。
モナコGP、カナダGPそしてヨーロッパGPと公道サーキットでのレースがここ3戦続いた。サーキットの特性ががらりと変わるシルバーストンでのレースをマッサは楽しみにしているようだ。
「どの程度の競争力が必要とされるのか、明確な目標を設定することは難しいと思う。今年は特に結果が予測不能のレースが続いているからね。それにシルバーストンは最近の数レースと全く異なるサーキットだから可能な限り準備万端で臨まないといけない」と気を引き締める。
「もしかしたらシルバーストンは想像しているよりも自分たちのクルマに合っているかもしれない。でも、バレンシア(前戦ヨーロッパGP)のQ2ではコンマ3秒の中に13台もひしめく大接戦だった。だから本当に行方を占うのが難しいシーズンなんだ」
「でも、僕たちのクルマは高速コーナーでのパフォーマンスがいいから、金曜日のフリー走行でF2012(フェラーリの2012年型車)の良さを最大限に引き出せるセットアップを見つけられるかがカギだと思う」
イギリスGPは、12あるF1チームのうち、9チームにとって母国レースとなる。かつての空軍基地につくられたことでも有名なサーキットは、F1カレンダーの中でも特別な存在だ。マッサもこのレースに抱く熱い思いがあるという。
「シルバーストンの雰囲気とサーキットがたまらなく好きなんだ。流れるようなコースに名物の高速コーナーがあって、一番好きなサーキットかもしれない。ほかのドライバーたちに聞いてもほぼ全員がそう言うんじゃないかな」
「もちろん天気も重要な要素の1つで、予報を見たんだけど雨が多そうなんだ。レース期間中は毎日40%の降水確率らしくてね。雨のシルバーストンは、見に来てくれるファンにとってよくないことかもしれないけれど、正直言って僕は雨のレースは特に気にならないよ。ドライバーの多くも同じだと思う。僕たちはカートを始めた小さなころから雨のレースを幾度となく経験しているから慣れているんだ。おもしろいレースになると思うよ」
「ただ、コンディションが厳しくなる場合もある。例えば、コース上に水がたまって、セーフティカーの後ろからレースを始めなければならない場合とかね。先頭を走っている分にはかまわないんだけど、3番手ぐらいまでを走っていないと、前よりも横を見ながらいま自分がどこを走っているのか確認しながらの運転になるんだ。前が見えない状態で走るわけだからね。ほかのドライバーたちも同じだと思うけど、こういう場合を除けば雨の中を運転するのは苦じゃないよ」
マッサのレースエンジニアを6年間務めているのがイギリス人だからなのか、マッサの口からシルバーストンに対して否定的なコメントは何一つ聞かれなかった。
「ロブ(スメドレイ)とは2006年のドイツGPで僕のレースエンジニアを担当してもらってからずっと一緒に仕事をしているよ。今では僕の好きなクルマのセットアップやドライビングスタイルのすべてをよく理解してくれている。でも、毎年クルマは変化するし、タイヤも異なる。ほかの要素も年々変わるから常に一緒に研究をしているよ」
「今年を例にとってみると、開幕直後の数レースは苦戦したけれど、その後ある分野で方向性を変えてみたんだ。そして今ではグランプリごとにサーキットに最適のセットアップを見つける作業がとてもスムーズになっている。そのおかげで、シーズンのこの段階にして進歩を実感できているんだ」
2人が共有するのは技術面だけではないようだ。
「イングランド北部出身のロブが話す英語の訛(なま)りがきついってみんなが言っているのは知っているよ。でも不思議なことに、僕はほかのイギリス人が話す英語より、ロブの英語の方が断然わかりやすいんだ」とマッサは笑顔で話す。
「ロブの話していることは100%理解できる。でも、もし彼が家族と話しているのを聞いたらちょっと分かりづらいかもしれないね。実際に彼の父親に会ったことがあるけど、簡単には聞き取れなかったよ!」
バレンシア以来、マッサはマラネロ(フェラーリの本拠地)のシミュレーターで多くの時間を費やしてきた。その間、フェラーリのクルマを所有している人たちのイベントにも参加している。
「こういったイベントは大好きだよ。F1ドライバーとしてフェラーリの新しい市販車の開発へ実際に携わっているからね」
「コメントもするしアイデアを出したりもする。クルマのバランスやセットアップ、エンジン、ギアボックス、ブレーキといったすべての感触を伝えたりもしているよ。F1のクルマから得た知識を市販車に適用できる場合は、特にこういった情報が重宝されるからね」
「市販車でレースコースを走る度に、パフォーマンスの良さにびっくりする。普通の人が乗ったらどう感じるのか想像しただけでわくわくするよ」
ヨーロッパGPが終わってから一度だけ、マッサががっかりしたことがある。それはヨーロッパ・サッカー選手権、ユーロ2012の決勝だ。
「僕の家族はもともとイタリア系だから、とても残念な結果(イタリア0-4スペイン)だった。ただ、アズーリ(イタリア代表のこと)がスペインに敗れたことは恥ずべきことではない」
「今回のスペイン代表は世界最強だと思う。各選手の能力の高さは言うまでもないけど、何がすごいってまずチームとして一致団結して戦っているところが素晴らしかった。日ごろから高いレベルでプレーをしているバルセロナとレアルマドリーの選手が多かったのも大きかったけどね」
「F1でも1人のトップドライバー、あるいは最強のエンジンさえあれば勝てるというわけではないから、今回のスペインの優勝は当然の結果だったかもしれない。真の成功を成し遂げるためにはチームが一丸となることが必要なのさ」