ジェンソン・バトン(マクラーレン)は、移籍騒動の渦中にあるチームメートの“ルイス・ハミルトン物語”を楽しんでいると認めた。
たとえF1であっても、ひとりのドライバーの翌シーズンへの動向が長期間にわたって大きな注目を集め続けるということは滅多にない。ところが、ハミルトンの2013年に向けての動きは数カ月間F1のパドックをにぎわせている。
「すごいことだと思うよ」とバトンはシンガポールで語った。
ハミルトンはばく大な契約金でメルセデスAMGヘと移籍するのではないかと考えられている一方で、セルジオ・ペレス(ザウバー)とポール・ディ・レスタ(フォース・インディア)がバトンの新たなチームメートの最有力として挙げられているという報道もある。
「僕たちがやらないと言ったことまでやっていることになっているから、毎日新聞やウェブサイトには目を通しているよ」とバトンは笑って答えた。
ポール・ディ・レスタはハミルトンがマクラーレンから離脱した場合、そのシートを引き継ぐドライバー候補のひとりとして考えられている。そのディ・レスタのマネジャーであるリチャード・ゴッダートはバトンのマネジメントも手掛けている。
さらにバトンとディ・レスタはどちらもモナコに住んでおり、一緒にサイクリングを楽しむ友人同士だ。
「リチャードの仕事は彼に任せている」とディ・レスタはシンガポールで語り、次のように続けた。
そして、バトンと友人関係であることは関係ないと主張し、「僕たち全員はレースをするためにここにいる。社交的なことをするためじゃない」と20日(木)に述べている。
バトンはディ・レスタがマクラーレンに移籍してくるのであれば歓迎すると発言していたことを伝えられると「それでも最終コーナーまで彼を打ち負かそうとするだろうね」と友情とレースは別物であると繰り返した。
ザウバーのペレスもマクラーレン加入へのうわさが絶えないドライバーのひとりだ。しかしペレスは20日(木)、すでに話し合いを行っているかという質問に対して明確に「それはない」と返答した。
この2人以外の候補はマクラーレンのシートをめぐる“物語”から姿を消しつつあるようだ。
2008年、2009年とマクラーレンに在籍した経験のあるヘイキ・コバライネン(ケーターハム)は「今週末」にも、ケーターハムと新しい契約に関しての話し合いを開始すると明かしている。
「いろんなうわさがあるけれど、所詮うわさに過ぎない」とコバライネンは『London Evening Standard(ロンドン・イブニング・スタンダード)』に語った。
ザウバーへの移籍の可能性もささやかれているコバライネンだが、ハミルトンの決断が自身の将来に多少なりとも影響するかもしれないと指摘している。
「最終的には彼(ハミルトン)が僕の今後にそれほどの影響を及ぼすとは思わない。でも、話したわけじゃないし、何らかの決断をしたのか、そうでないのかも知らない」
ニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)もまた、2014年まで現在のチームとの契約があることを主張することで、一連のうわさと距離を置いている。
ロズベルグは自身がハミルトンと入れ替わりでマクラーレンへ移籍するという憶測を「意味不明だね」とあざ笑っている。
「2013年の僕のチームメートがミハエル(シューマッハ/メルセデスAMG)になるかルイスになるのかについての情報は、パドックの他のみんなと同じくらいしかないよ」
ロズベルグのチームメートに収まるのはシューマッハかハミルトンのどちらかになるとみられており、状況はずいぶんシンプルと言える。
当のシューマッハは20日(木)、「変わったことはない」とハミルトンと同様に沈黙を守った。
しかし、ドイツの『Bild(ビルト)』紙の報道によると、仮にハミルトンはメルセデスAMGに対して「イエス」の返事をした場合、メルセデスAMGは「泣く泣く」シューマッハに別れを告げることになるという。また、ハミルトンとシューマッハはほとんど口を開くことがない。
『Bild(ビルト)』紙にメルセデスAMGの2013年のクルマを楽しみにしているかとの問いに対してシューマッハは「そのうち分かるよ。すまないね」と答えた。