スタート直後の混乱の原因となることが多いロメ・グロジャン(ロータス)。これによりグロジャンの将来に暗雲が立ち込めているかとの質問に対し、ロータスのチーム代表でグロジャンのマネジメントを手掛けるグラビティ社代表のエリック・ブーリエはあいまいな態度で応じた。
「今のところはそういうことはないだろう」
第12戦ベルギーGPにおけるスタート直後の混乱を引き起こした罰により、翌戦のイタリアGP出場停止を言い渡されたグロジャン。先週末の日本GPでもスタート直後にマーク・ウェバー(レッドブル)と接触し、ウェバーの激しい怒りを買っている。
日本GP終了後、グロジャンのことを「狂人」と非難したウェバーだが、それ以前にもイギリスのメディア『BBC』に対して「スタートが2回必要かもしれない。1回は彼のための、もう1回は僕たちのためのね」と話していた。
この問題に際して、多くのF1関係者がFIA(国際自動車連盟)に対しグロジャンの出場停止処分を要請。それを受けてか、日本におけるグロジャンは今にも泣きそうな様子であった。
フランスのメディア『RMC』もグロジャンのキャリアが危機に瀕(ひん)しているのではないかと懐疑的状態にある中、現在のところはグロジャンを弁護しているブーリエはこう語る。
「あのシューマッハ(ミハエル・シューマッハ/メルセデスAMG)でさえ、最初はクラッシュを繰り返していた」
「そうは言っても、チーム全体が意気消沈してしまっていることは間違いない。私を含めてね」
『RMC』は、ロータスの最大のスポンサーである石油会社トタルがグロジャンのサポートも行っていることを考慮すると、2013年はチームにとどまることが可能だと推測している。ただその一方で、グロジャンを残留させる「オプション」契約は、韓国GP決勝の翌日(15日)に期限を迎えるとも『RMC』は報じた。
そして「日本GP以前は、この条項が効力を発揮することは疑いようもなかった」と『RMC』は続ける。目下の優先事項は、グロジャンのクラッシュの多さだ。
「彼を取り巻く環境を変えることは簡単だ。しかし最終的には、彼自身がプレッシャーをうまくコントロールする方法を学ばねばならない」とブーリエは語った。
そしてそのプレッシャーは、まだレースが始まっていないにもかかわらず、既に最高潮に達してしまっている状態だ。フランス出身の元F1ドライバーであるオリビエ・パニスはこう語る。
「彼は才能にあふれており、偉大なことを成し遂げる可能性を秘めている」
「しかし長い目で見ると、こういった行為の繰り返しは彼のためにはならない」
元F1ドライバーで現在はイギリスのメディア『Sky(スカイ)』で解説を務めるマーティン・ブランドルは次のように述べている。
「接近戦における彼の判断は明らかに間違っている。しかしそれに対して彼が何をできるのか私には分からない」
「(レーススタート時において)意識的に決断することは不可能だ。そして決断すべき瞬間が差し迫ったとき、それはほとんど起きてしまっている」