F1パワーユニット(PU)製造からの撤退を決めたルノーグループのルカ・デ・メオCEOは、ブランドが「見えない存在」になってしまったため、F1におけるアルピーヌは大変革が必要だったと述べた。
■PUのコストは年間500億円超え
デ・メオCEOは、ヴィリー・シャティヨンでのF1エンジンプロジェクトを廃止する決断は「胸が張り裂けるようだった」とし、「数ヶ月にわたる熟考した結果」であると強調した。この期間中、ヴィリーのF1エンジン部門のスタッフたちは、抗議活動やストライキの形で撤退決定に激しく抵抗した。
「私はヴィリー・シャティヨンの人々の献身と粘り強さに感服しています。彼らにはガッツがありますし、それは朗報です。しかし、F1の中では私たちは見えない存在になっています。このまま2年間続けば、プロジェクトは完全に崩壊していたでしょう。私たちはこの下降線から脱却しなければなりません」とデ・メオCEOは語った。
2026年からはほぼ確実にメルセデスのカスタマーパワーユニットを使用することになるが、これにはパフォーマンスの向上とコスト削減という2つの利点が得られるという。
「F1パワーユニットの生産コストは年間2億から2億5,000万ユーロ(約325億円〜400億円)に上り、さらに1億5,000万ユーロ(約240億円)の運営予算が必要です。しかし、私たちの選手権順位を考えると、F1から得られるボーナスでは足りません。スポンサーも少なく、私たちは財政的に苦境に立たされています。私の株主たちは数字の数え方を知っていますし、アルピーヌは利益を上げなければなりません。私たちの16位と17位という位置は、まるでジョーカーのようです。」
■アルピーヌのF1撤退はない
さらに、2026年のレギュレーションが妥協の産物である「フランケンシュタイン的な」解決策であるとし、さらにフラビオ・ブリアトーレを招聘した理由は、エンジンプロジェクトを終了させ、チームの売却準備のためではないとはっきり否定した。
「彼が最終的にチームを売却するためにプロジェクトを再構築する予定だという記事を読んだことがありますが、それは完全な間違いです。私はF1から撤退するために彼を呼んだわけではありません」
「私たちがF1に残ることにメリットがあることは明らかです。フラビオはこのプロジェクトの活性化の中心人物です。私たちはチームを再編成し、エンストンに集中しています」
「ファンの立場も理解していますが、たとえ私にとっても非常に感情的な問題であったとしても、彼らと同じように決断することはできません。私はレースに情熱を傾けていますが、自分の感情に反して決断を下さなければなりませんでした」
「多くの方々が失望されていることを深くお詫び申し上げますが、これは私の仕事の一部です。私は上場企業の経営者です。私はF1プロジェクトを再考し、近道を見つけ、勝てる方法を見つけなければなりませんでした」
■ファンはエンジンではなくクルマを見ている
デ・メオCEOは、F1が近年変化してきたことについても触れている。
「ファンやスポンサーは、もはやエンジンではなくチームやクルマに注目しています。スポンサーはメルセデスではなくマクラーレンと契約します。今では若い人や女性が増え、スポーツの解釈が異なる新しい顧客が生まれています。そして、スポンサーが不足しており、私たちは低迷しています。アルピーヌは利益を上げなければなりません」
■「家宝」のアルピーヌは売らない
簡単にお金を得る方法は、チームを完全に売却することだが、デ・メオCEOは購入を希望する「奇抜な人々」からの電話を「2週間ごとに」受けていると認めた。
「彼らは2026年以降にF1に参入するのがはるかに高くつくことを知っています。もし私が10億ドル(約1,500億円)でチームを売れば、彼らは1年後に倍か3倍の値段で転売できるでしょう。彼らはチームの価値が30億から50億ドル(約4,500億円〜7,500億円)になると分かっています」
「F1に参戦することはアルピーヌにとって不可欠です。私たちは閉じられたクラブにいるわけで、これが自動車愛好家の間でブランドに信頼性を与えます。それに、私たちはチーム売却から得られるお金を必要としていません」と述べ、デ・メオCEOはアルピーヌを「家宝」と表現した。