・角田裕毅がアメリカGPスプリント予選SQ1で18番手敗退、痛恨の判断ミス
・ピット渋滞に巻き込まれ、残り1分45秒でコースインもアタック開始前にチェッカー
・フェルスタッペンは走行を続けて渋滞を回避、角田陣営は判断ミスが命取りに
F1第19戦アメリカGPのスプリント予選(SQ1)で、角田裕毅(レッドブル)は18番手となり敗退を喫した。SQ1で何が起こっていたのか振り返ってみよう。
SQ1では多くのチームが最後のアタックのタイミングを少し誤ってしまったが、チーム無線の中で最も苛立っていたのは角田だったようだ。
角田の1回目のアタックラップは14番手タイムだった。チームメートのフェルスタッペンの1回目のタイムと比較してみよう。
角田裕毅/フェルスタッペン(タイム差)
セクター1:25.914/25.452(+0.462)
セクター2:38.332/38.040(+0.292)
セクター3:31.013/30.648(+0.365)
1回目:1:35.259/1:34.140(+1.119)
この時点でもフェルスタッペンとの差は大きく、1回目でタイムを残せなかったことが後に大きな痛手となった。
角田は1回目のアタックを終えてピットに戻り、2回目のアタックに向けて再びコースインしようとした。しかしそのタイミングが遅く、ピットレーン上の最後尾に並ぶ形となり、大渋滞の中で順番待ちを強いられた。
前方のドライバーたちはトラフィックを避けるため、ピット出口で間隔を取ってタイミングを調整していた。こうした駆け引きは予選では日常的なものであり、スプリント予選特有の事情ではない。結果的に角田陣営はその状況を読み切れず、敗退の道をたどることになった。
渋滞によって時間を浪費し、角田がようやくコースインしたのはセッション残り1分45秒。角田の1回目のアタックが1分35秒台だったことを考えれば、猶予はわずか10秒ほどしかない。さらにコースイン直後にはトラフィックにも巻き込まれた。1コーナーでリアム・ローソン(レーシングブルズ)を抜こうとしたが、ターン2で並走となり、角田はアクセルを緩めざるを得なかった。誰もが残り時間が少ないことを知っており、全員が生き残りを賭けているのだから仕方ない。その結果、2回目のアタックに入る前にチェッカーフラッグを迎え、1回目のタイムのまま18番手でセッションを終えた。
一方のフェルスタッペンは、1回目のタイムを出した後もピットインせず、チャージラップを挟みながらコース上に留まり続けた。この判断により、12分という短いセッションでもピットレーンの渋滞に巻き込まれることなく、確実に2回目のアタックに入ることができた。
角田にとっては悔しい結果となったが、時間の短いスプリント予選では時間配分と判断が勝負を分ける。チームと共に戦略を立てても、他チームの動きは読めない。全員が同じ条件下で12分を使う以上、わずかな判断の違いが明暗を分ける。
角田は今回の敗退で、コース上での判断力や対応力の重要さをあらためて痛感したはずだ。どんなセッションでも、すべてを計画どおりに進められるわけではない。だからこそ、予想外の状況に直面した際に、瞬時に正しい判断を下せる力が必要とされる。
しかし、まだスプリントレースと本予選が残されている。明日のスプリントではマシンを壊さずデータ収集に努め、予選では初回のアタックから確実にタイムを残すことが求められる。ミスも戦略の誤算も許されない状況だ。
来季のシートを決めるヘルムート・マルコ博士は「来季シートはメキシコGPまでに決める」と明言している。勝てるマシンに乗っている角田は、とにかく結果を残さなければならない。速さは十分に認められている。F1参戦5年目の角田には、すべての状況を把握し、陣営をまとめ上げて結果につなげる力が必要だ。レースでは、セッティングや戦略が完璧でないことのほうが多い。どんな状況でもチームを正しい方向へ導き、結果を出せるドライバーこそが、トップチームに求められる存在である。
フェルスタッペンは、1回目でもしっかりタイムを残し、戦略ミスで走れなかったという場面がほとんどない。もちろんファーストドライバーとセカンドドライバーではチームの優先順位に差があるのは当然だが、フェルスタッペンは実力で今の立場を掴んだ。角田も、まずはミスなく一発でタイムを決められるようにしたいところだ。
チームが正しい判断を下せるようになるまで待っていられるほど角田に時間は残っていない。泣いても笑っても運命が決まるまで残り2戦。F1は結果が全てだ。崖っぷちに追い込まれた角田の走りに注目したい。
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