ホンダF1「PUだけでは解決できない」アストンマーティン振動問題の壁、課題は“総合力” ADUO承認が鍵か?

2026年03月29日(日)10:18 am

記事要約


・日本GPを前に、アストンマーティンとホンダの間で信頼性を巡る認識のズレが表面化した

・ホンダは完走できる信頼性を確保したと強調する一方、ストロールは依然として厳しい状況だと懸念を示した

・両者は人員体制や連携のあり方にも課題を抱えつつ、ADUO活用と協力強化で巻き返しを目指している


■日本GPを前にアストンマーティンとホンダの間で緊張高まる

F1日本GPを前に、アストンマーティンとパワーユニット(PU)サプライヤーであるホンダの間で、信頼性に関する見解の食い違いが浮き彫りとなり、混乱と緊張が高まっていると海外で報じられている。

これについて、ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長は、F1日本GPで日本の報道陣への対応に加え、F1公式記者会見にも出席した。また、パドック内でTopNewsの取材に応じ、次のように語った。

「そんなことはまったくありません。アストンマーティンとは、解決に向けて同じ方向を向いています。もちろん我々も直さなければならないところはありますが、F1は車体側を含めた総合力なんです」

■F1は総合力の勝負だ

F1では、何か問題が出ると一部を戦犯としてフォーカスされがちだが、レース界はパッケージ=総合力=チーム力で勝負する世界だ。今年、メルセデスF1チームが頭1つ抜けているのは疑いようのない事実だが、同じメルセデスPUを使っている他チームは同じ速さを見せていない。スクーデリア・フェラーリもグリッドからのスタートが抜群に優れているが、他のフェラーリPUを利用するチームも同じように抜群に優れているわけではない。

昨年までチャンピオン争いをしていたホンダPUが突然最下位になるには理由がある。一番大きいのはチームが変わったことだ。メルセデスやフェラーリのPUを購入しているカスタマーチームを見れば、PU単体で勝負が決まるわけではないことがわかる。

また、天才エイドリアン・ニューウェイをチームに招聘したとしても、一夜にしてチーム力が変わるものではない。ニューウェイが創出した優れたコンセプトを理解し、適切に運用する力が求められる。我々がどんなに優れた高級車、高級家電、高級カメラを手に入れたとしても、それを使いこなして性能を最大限引き出すのは“人”だ。

F1には製品(マシン)のマニュアルはない。人がそのマシンの本質を理解し、使い方を見つけ出し、うまく使いこなすことでその性能が100%発揮できる。それをできるか否かがチーム力、つまり人の力の勝負なのだ。

つまり、現在の状況は単なるPUの問題ではなく、車体や運用を含めた“総合力”の差として表れている。

■ホンダは信頼性の改善を強調

こうした“総合力”の課題は、すでに現場にも影響を及ぼしている。

ホンダのホームレースである鈴鹿サーキットで、トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアの折原伸太郎は、オーストラリアGPと中国GPでマシンを悩ませた深刻な振動問題について、改善が進んでいると説明した。

「バッテリーに関しては、レースを完走できるだけの信頼性は確保できています」と折原は語った。

■ストロールは依然として懸念を示す

一方で、アストンマーティンのランス・ストロールは、異なる見解を示している。

「レースの半分くらいは走れると思いますが、僕たちは信頼性の問題も抱えています。だから、非常に厳しい状況です」とストロールは語った。

■2026年プロジェクトを巡る認識のズレ

こうした食い違いは、両者の間にある不安を浮き彫りにするとともに、問題視されている2026年プロジェクトの準備体制にも疑問を投げかけている。

アストンマーティンF1代表のエイドリアン・ニューウェイは、ホンダがF1復帰に向けて投入する人員が、当初の想定よりも少なかったことを昨年末になって初めて知ったと明かしている。

これに対し、HRCの渡辺康治社長は次のように述べた。

「おそらくエイドリアンは状況を誤解していたのでしょう。2021年以前にF1に携わっていたスタッフ全員を呼び戻す計画はもともとありませんでした。確かに2022年の開発開始当初は、エンジニアの数も予算も少なかったです。それが影響した可能性はあります。

しかし、現在F1に携わっているスタッフは、専門性を持った人材ばかりです。ド素人のような経験不足の人材ではありません。これはアストンマーティンにも説明しています。私たちは何も隠していません」と渡辺社長は報道陣に語った。

また、アストンマーティンとの信頼関係についても次のように語っている。

「関係が悪化しているわけではありませんが、信頼関係は一夜にして築かれるものではありません。困難な時期を共に乗り越えることで、時間をかけて築いていくものだと考えています」

さらに、振動問題の解決にはより緊密な連携が必要だと強調した。

「振動問題は、パワーユニットの改良だけでは解決できません。アストンマーティンと協力し、この問題に対する共通理解を深めていく必要があります」

HRCの渡辺社長およびホンダ首脳陣は、特定の誰かや何かを批判することはなく、「総合力」だと繰り返し語ってきた。世界有数の自動車メーカーとして、レーシングカーを含めたクルマは、総合力で決まることを知っているからだ。

レッドブルとの数年間で勝ち方を知り尽くしているホンダとHRCは、現在、チーム側と「ワンチーム」になることの重要性を何度も繰り返している。車体+PU+オイル+ギアボックスなどすべてが新しい取り組みであり、どれか1つだけでは勝てない。重要なのはチーム全体の底上げだ。また、勝つために必要なのは、誰かを批判し責任をなすりつけることではなく、チーム力の底上げが重要だとレースの本質を理解しているのがホンダだ。

例えば、軽自動車にF1のパワーユニットを載せてもうまく機能するわけもなく、その逆も同じだ。ホンダの企業文化として、レースで人を鍛え、育てるという目的がある。F1経験のない他部署の人材にも挑戦させ、経験値を高めている。

こうした取り組みは、他のPUメーカーやチームでも同様に行われている。どこのチームもベテランと新人を組み合わせて総合力を上げている。

昨年、レッドブルの角田裕毅はエンジニアとのコミュニケーションで苦労していたが、そのエンジニアはベテランではなかったことでもわかる。レッドブルでさえも、いつ主要人物が抜けてもいいようにチームの総合力を上げようとしている。

■ADUO活用で巻き返しへ

また、特定条件下で性能開発を認める救済措置「ADUO」にも期待が寄せられている。

「ADUOが承認されれば、性能向上に向けた開発と資金投入を進めることができ、大幅な改善につながる可能性があります」と渡辺社長は述べた。

しかし、そのADUOを認めるのはFIA(国際自動車連盟)であり、それがいつになるかはわからない。よって、「現時点では信頼性の向上が最優先事項です」とも強調している。

■現場でも深刻な影響、アロンソはリタイア

アストンマーティンのチーフ・トラックサイド・オフィサー、マイク・クラックも、状況の厳しさを認めている。

F1中国GPでは、振動によってステアリング操作が困難となり、フェルナンド・アロンソが自らリタイアを選択する事態も発生した。

「フェルナンドは不快感を訴えており、我々は彼の言葉を信じなければなりません。そこには敬意と信頼があります。ドライバーがレース継続は不可能だと言えば、適切な対応を取る必要があります」とクラックは語った。

そのためにも、まずは信頼性の確保とチーム間の連携強化が急務となっている。

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