F1超えは現実に?フォーミュラE代表が語る“次世代バッテリー革命”と日本企業への期待

2025年05月16日(金)14:31 pm

記事要約


・フォーミュラEは技術革新により、F1を超える性能を視野に

・GEN4で600kW、将来は全固体電池導入や急速充電対応も

・社会貢献や多様性重視の姿勢で、新マニュファクチャラー獲得にも意欲


2025年5月16日(金)、フォーミュラEのジェフ・トッズCEOは東京E Prixの記者会見で、東京と日本市場への想い、そしてフォーミュラEの将来について次のように語った。

「私はホンダで長年働いていましたし、F1チームにも関わっていたので、東京には何度も来ています。昨年の東京E Prixは特に印象的でした。首相や都知事も来場し、素晴らしいレースでした。今年も大きな期待を持っています」

■ピットブーストの安全性

今週末の天気が懸念される中、新導入されたピットブーストの安全性についての質問には、次のように答えた。

フォーミュラEのピットブーストとは、レース中にピットレーンで30秒間にわたり600kWの超高速充電を行うことで、バッテリー残量を10%(3.85kWh)増加させる機能だ。

「ピットブーストは天候の影響を受けません。2週間前のモナコのように初日がドライで翌日がウェットでも問題ありませんでした。もちろんウェット路面ではドライバーにとって難易度が高まりますが、ピットブーストの実施に支障はありません」

「極端な豪雨になれば、安全上の理由で中止もあり得ますが、それはタイヤの問題であって、ピットブーストの問題ではありません」

また日本の技術力の高さを評価しつつ、「雨を止める技術を日本が開発してくれていることを願っています(笑)」とジョークを交えた。

■進化するマシン「11年前は140マイル、今は200マイル」

技術革新の歩みに関する質問には、過去と現在のマシンの違いを挙げて次のように語った。

「11年前のマシンはトップスピードが140マイル(約225km/h)程度で、モーター技術も限定的でした。バッテリーもレース距離の半分しかもたず、途中で車を乗り換える必要がありました」

「現在のマシンは0-100km/h加速が初代の倍以上の速さで、最高速度は200マイル(約320km/h)。バッテリーも1本で1レース走り切れます。来年には第4世代のGEN4マシンが登場し、さらに倍近い600kWの最高出力と、新たなバッテリー技術が導入されます」

「今後5年以内に、私たちのマシンがモナコのような市街地コースでF1カーよりも速くなる可能性があると本気で考えています」

■「次は全固体電池」第5世代GEN5マシンへの期待

「進化の鍵はバッテリー開発です。第5世代ではリチウムイオンから全固体電池に移行することで、エネルギー密度が向上し、同じ出力でも軽量化が可能になります。最大で30〜40%の軽量化が期待でき、これは大きな性能向上につながります」

■「年間EV販売台数は300万台から2000万台へ」社会へのインパクト

フォーミュラEの技術が社会にもたらす意義について問われると、次のように述べた。

「世界の輸送分野は、全エネルギー起因の排出の約25%を占めています。フォーミュラEを立ち上げた2014年当時、世界で売れたEVは30万台程度でしたが、今年は2000万台、2030年には4000万台と予測されています」

「私たちは、観客が電動レースに魅了され、EVに対する理解が深まることで、内燃機関からEVへの移行を加速させたいと考えています。これは気温上昇を抑制するという社会的な意義に直結します」

■「誰もが参画できるスポーツに」低価格チケットと多様性

「環境面だけでなく、社会的なサステナビリティも重要視しています。フォーミュラEではチケット価格を低く抑え、多くの人が観戦できるようにしています。両親がチームオーナーのような大富豪でなくてもレーシングドライバーになれるような仕組みにすることで、多様な背景の人が参加できるよう努力しています」

■「バッテリー技術の自由化は第5世代から」

バッテリーの開発自由化に関しては、次のように語った。

「第4世代ではまだリチウムイオンであり、コスト管理のため開発競争を制限しています。チームの予算に大きな差があるため、パフォーマンス差が広がりすぎるのを防いでいます。ですが第5世代では、全固体電池の登場とともに自由化を検討しています」

■「急速充電よりもバッテリー側の対応が鍵」

バッテリーがより長距離・高出力に進化する中、将来的な充電スピードについては次のように答えた。

「現在の制約はチャージャー(充電器)側ではなく、バッテリーが急速充電に対応できるかどうかです。全固体電池になれば、10秒〜1分での充電も可能になります」

■「1時間レースが最適」

レース時間の長さについては、コンパクトさが支持されていると述べた。

「現在のレース時間(約45〜50分)は観客の満足度が高く、必ずしもF1のように90分にする必要はありません。コンパクトでスリリングなレースが支持されています」

■「マクラーレン離脱は残念、でも理解できる」

マクラーレンがフォーミュラEからの撤退を発表した件については、次のように語った。

「マクラーレンはマニュファクチャラーではなく、日産のパワートレインを使用しています。また市販車でEVを販売しておらず、今後数年間もその予定はないようです。加えて、彼らのスポンサーの要望もあり、フォーミュラEからの撤退は理解できます」

「ですが、次に参戦してくれるチームに期待しています。新たなブランドやメーカーとの交渉も進んでいます」

■マニュファクチャラー数

フォーミュラEには、多様なマニュファクチャラーが参戦していると強調した。

「インディカーは2社、ナスカーは3社、F1は4社のメーカーがいますが、我々は6社です。そして第4世代でも既に5社が継続を表明しています」

■「日本の自動車メーカー幹部とも面会」

東京大会期間中には、多くの日本企業とのミーティングも予定されているという。

「東京滞在中、ホンダ・レーシング(HRC)やヤマハ、日産の新CEO、そしてブリヂストンとも面会する予定です。ぜひ現地で私の動きにも注目してください」

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