・フェルスタッペンがスプリントで完勝し、マクラーレン勢のダブルリタイアで心理的優位に
・ヒュルケンベルグとアロンソの接触でノリスとピアストリが脱落、ウェバーは「誰も責められない」
・マルコ博士「マクラーレンの自信にヒビ」、ウルフ代表も「タイトル争いの流れが変わりつつある」と指摘
マックス・フェルスタッペンがアメリカGPのスプリントで再び勢いを示した。1周目でマクラーレン勢が揃ってリタイアする波乱の展開となり、レッドブルにとっては心理的にも大きなアドバンテージを得る週末となった。
スプリント1周目、ターン1でランド・ノリスとオスカー・ピアストリが相次いでクラッシュ。ニコ・ヒュルケンベルグ(Kickザウバー)とフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)が絡んだ連鎖的な接触が原因で、2台のマクラーレンはレースを終えることになった。
マクラーレンのザク・ブラウンCEOとアンドレア・ステラ代表は、当初ヒュルケンベルグを「アマチュアのようだ」と批判したが、その後コメントを撤回している。
実際には、ターン1のアウト側にいたピアストリが急にノリスのイン側へ進路を変えたことで、ヒュルケンベルグに迫って接触した。ヒュルケンベルグのイン側にはフェルナンド・アロンソがいたため、ヒュルケンベルグは挟まれる形となっていた。
「マクラーレン勢は、他にもマシンが走っていることを忘れていたのかもしれませんね」とヒュルケンベルグは『Canal Plus』に語った。
ピアストリのマネージャーであるマーク・ウェバーも「典型的なスタート時のアクシデント」と冷静に分析した。
「アロンソがイン側にいて、ニコは衝突を避けようと反応しました。オスカーはランドを抜こうとして内側にポジションを取りました。彼は他のドライバーより前にいたので、その権利がありました。誰か一人を責めるような事故ではありません」とウェバーは説明した。
スプリントでのダブルリタイアにより、マクラーレンにとっては厳しい一日となった。フェルスタッペンは終始レースを支配し、一方でピアストリは週末を通してペース不足に苦しんでいる。
『Sky Deutschland』のティモ・グロックは予選後に次のように指摘した。
「ノリスは良い位置にいますが、オスカー・ピアストリに何が起きているのかが問題です。2人の差が突然これほど大きくなっている。1周を通して常に遅く、タイヤやマシンのフィーリングを掴めていないか、あるいはメンタル面の問題かもしれません。その状況を最大限に生かしているのがマックス・フェルスタッペンです。マクラーレンの流れが悪い方向に向かっているように見えます」
レッドブルのヘルムート・マルコ博士も、今こそ攻勢をかける時だと強調する。
「我々は今、勝ち続けなければなりません。まだスタート直後の混戦が起きそうなレースがいくつか残っています。失うものは何もない。ピアストリがミスをしているのが見えますね──いいことです。あの接触でマクラーレンの自信にヒビが入ったでしょう」と82歳のマルコ博士は笑顔を見せた。
現時点でピアストリとの差は55ポイントだが、「オースティンで15ポイントを詰めることを目標にしていた。それが実現しそうだ」とも語った。
メルセデスのトト・ウルフ代表も、タイトル争いの流れが変わりつつあると見ている。
「今、状況はかなり緊迫してきています。マックスがどんどん近づいている。いずれマクラーレンは“ナンバー1ドライバー”をどうするか決めなければならなくなるでしょう」と語った。
アストンマーティンのアンバサダーを務めるペドロ・デ・ラ・ロサも『DAZN』でフェルスタッペンの精神面を高く評価した。
「彼にはもう失うものがありません。自分が一度終わったと思っていたところから、再び“ニンジン”が見えてくる──これほど強いモチベーションはありません。まだ多くのポイントが残っており、流れは完全に逆転に向かっています」と語った。
一方で、フェルスタッペン本人は冷静に構えている。
「信じるとか信じないとかではありません。僕はただ、一戦一戦をこなしていくだけです」と報道陣に語った。
「今日は完璧な一日でした。確実に少し近づけたのは嬉しいことですが、彼ら(マクラーレン)にとってはそうでもないでしょうね」と笑いながら続けた。
「ただ、今日のペースには完全には満足していません。明日勝つためにはもっと改善が必要です。そこに集中します」
F1アメリカGPの決勝レースは、さらに見逃せない展開になりそうだ。