【京都F1写真展】片山右京の目は今も輝いていた 「The EYES」100人超の満員 熱く語ったF1と若手へのメッセージ

2026年06月05日(金)18:00 pm

記事要約


・片山右京氏が京都の写真展『The EYES』で登壇

・間瀬明氏との縁や、写真に宿る「目」への思いを語る

・若手ドライバーへ覚悟の重要性を伝えた


2026年6月3日(水)、元F1ドライバーの片山右京氏が、京都文化博物館で開催中の写真展『The EYES』でトークショーに登壇した。

■台風にも負けず、会場は満員に

前日からの台風の影響で交通機関や開催そのものが危ぶまれたこともあり、片山氏は念のため京都に前泊していたという。午前9時前には台風が京都を通過し、トークショーは無事に開催されることになった。

見通しの立たない天候の中、平日にもかかわらず、開演1時間前の会場には長蛇の列ができていた。会場には100名を超える来場者が集まり、入口付近まで立ち見の人であふれるほどの熱気に包まれていた。

2026年、京都文化博物館で開催された写真展『The EYES』トークショーに登壇した片山右京氏の話を100名を超えるファンが聞き入った(C)TopNews.jp

■F1を文化として伝える写真展

この写真展は、4年前に他界した間瀬明氏が生涯追い続けたF1への熱い想いを、一番近くで感じていた和子夫人の行動から始まった。間瀬氏が約60年にわたり撮り続けたF1の報道写真を「文化」へと昇華させ、後世に遺したいという想いがあった。

今も数万枚におよぶ写真や、貴重なF1マシンのカウル、ヘルメットなどが所蔵されている。歴史ある京都の地で、F1を「文化」として伝えたいという和子夫人の想いに共感した、京都の文化に精通する有志の実行委員が動き、重要文化財である旧日本銀行京都支店、京都文化博物館別館での写真展開催が実現した。

第2期ホンダF1では、モーターホームの運営を通じて、F1界に日本文化を伝える役割も担っていた間瀬氏。今回の写真展には、ホンダ・レーシングも協賛している。

2026年、京都文化博物館で開催された写真展『The EYES』にはホンダ・レーシングからトリコロールのお祝いの花が届いた(C)TopNews.jp

■間瀬明氏との縁

片山氏が語った登壇までの経緯は、和子夫人からの連絡だった。

「お葬式に出ていたので、間瀬さんが亡くなったことはわかっていました。でも、いつものように間瀬さんから連絡がきて、『京都においでよ』と言われているような気がして、『いいですよ』とお返事しました。まるで間瀬さんに呼ばれたようでした」

そう語る片山氏は、この登壇にも不思議な縁を感じていたという。

2026年、京都文化博物館で開催された写真展『The EYES』に登壇した片山右京氏と間瀬和子さん(C)TopNews.jp

■時速300キロの世界で見せた「目」

1992年、片山右京氏は28歳でF1ドライバーとなった。F1の歴史に残る伝説的レーサーであり、今も世界中の憧れの存在であるアイルトン・セナやミハエル・シューマッハらと同じ時代に同じフィールドで戦い、時速300キロを超える世界で大事故も経験しながら、命を懸けて必死に走ってきた。今のような安全性の高いレーシングカーになる前の話だ。

その経験から、現役当時はカメラマンに「目」を撮られるのが嫌だったという。

「目は口ほどにものを言う。目を見れば、怯えている自分も全部バレてしまう。良い人に見られたいのに、獣のような獰猛な目なんて見られたくないのに、目を見たら全部バレてしまうんです」

京都文化博物館で開催された写真展『The EYES』に登壇した片山右京氏と間瀬明氏が家に飾っていた本物のF1マシンのカウル(C)TopNews.jp

間瀬氏とは仕事の関係を超え、一緒に食事をし、山登りもする特別な写真家だったという。

「良い寿司屋に行くような関係ではなく、喫茶店でパスタを食べるような間柄でした」

その身近さを懐かしむように語りながら、片山氏は写真を見つめてこう続けた。

「あらためて奥さまから連絡をいただいて、間瀬さんのことをもっといろいろ聞いておけばよかったと思いました。聞いてみたいことがたくさんあります」

■展示写真が呼び起こした記憶

トークショーを終えた片山氏は、会場に並ぶ写真の数々を見ながら、思い出をたどっていた。

「僕のポリシーとして、過去を振り返らず、前だけを向いています。昔の話は普段しないんです。でも、今日は朝早く起きて昔のことを思い出して、こうして振り返るのもたまにはいいなと思いました」

報道陣数名とともに展示写真を見ながら、特に印象的な写真を尋ねられると、片山氏は「カメラに向かって優しく笑っている、あのジル・ビルヌーブの表情には驚きました」と語った。

京都の写真展『The EYES』では若き日のアイルトン・セナ、ジル・ビルヌーブ、ミハエル・シューマッハの写真も展示(C)TopNews.jp

さらに、「あの草原の中を走っているような写真もいい」と言って写真に近づくと、和子夫人は「間瀬は風景写真から始まったんですよ」と、F1写真家になる前の間瀬氏について語った。

2026年、京都文化博物館で開催された写真展『The EYES』(C)TopNews.jp

ヘルメット越しのドライバーの目を見ながらこうも語った。

「セナみたいに、遠くを見ている目が一番自然だと思います」

また、1989年発売の写真集『The EYES』の表紙が、セナやアラン・プロストではなくエリック・ベルナールだと知ると、片山氏は驚いた表情を見せた。

「え!そうなの?彼はフランスF3時代の同期で、F1界では良い人でした」

京都文化博物館で開催された写真展『The EYES』に登壇した片山右京氏と同時代を走ってきたアイルトン・セナ(左中央)やエリック・ベルナール(右上)。中嶋悟(左下)やナイジェル・マンセル(中央上)(C)TopNews.jp

■フランスで磨いた速さと、F1への道

片山氏は、モーターレース発祥の地フランスに武者修行で渡り、ウィンフィールド・レーシングスクールのポールリカール校に入学した。同校卒業生のアラン・プロストが記録していたタイムを上回り、校長からも絶賛されたという。同校は、中嶋悟の同僚だったジャン・アレジや、無限ホンダにモナコGP優勝をもたらしたオリビエ・パニスなども卒業している名門校だ。

そのころから「カミカゼ」と呼ばれる速さが評判となり、車中泊をしながらレースを戦い、頂点であるF1までたどり着いた苦労人でもある。

多くの人に支えられてきた片山氏は、取材に訪れた我々メディアに対してもリスペクトを忘れなかった。

「午前中まで台風だったし、平日だし、お客さんは5人くらいしか来ないんじゃないかと思っていましたが(笑)、これだけ多くの人が集まったのはメディアの皆さんのおかげですね」

冗談めかしながらも、来場者が集まり、写真展の熱気が広がったことを周囲への感謝として語る姿が印象的だった。

■縁がつないだトークショー

間瀬氏と片山氏に共通しているのは、好きなことを諦めずに突き詰め、世界を舞台にしながらも、人との縁や優しさを大切にしてきたことなのかもしれない。F1という厳しい世界の中で戦い、撮り続け、走り続けてきた2人の人生には、情熱だけでなく、周囲への感謝がにじんでいた。

2026年、京都文化博物館で開催された写真展『The EYES』(C)TopNews.jp

■若いドライバーへの熱いメッセージ

F1の黄金期とも言われる時代を戦ってきた片山氏に、今の若いレーシングドライバーたちへ伝えたいことを尋ねると、返ってきたのは「覚悟」という言葉だった。それは、片山右京氏の人生そのものを表しているようにも感じられた。

「いつどうなるかわからないからこそ、今日を一生懸命やってほしい。ただスポーツをやっています、ではなく覚悟を忘れちゃいけない。自分がやっていることが必要とされるとか、役に立たなければいけないんだという立体感を持たないと、本当の意味でのレーサーにはなれない。それは忘れてはいけないと思います」

2026年、京都文化博物館で開催された写真展『The EYES』(C)TopNews.jp

■F1を追い続けた2人が残したもの

間瀬明氏と片山右京氏。モータースポーツの頂点であるF1を、それぞれの立場で追い続けてきた2人が共鳴し、仕事を超えて人生の時間を共に過ごしたからこそ、このトークショーは実現した。

「人との縁は大事」と語った片山氏が、その熱い思い出を多くのファンに伝えたことで、片山右京氏の現役時代を知らない若いファンも「お話を聞いてF1がますます好きになりました」と興奮気味に語っていた。

往年のF1ファンの目には懐かしく映り、新しいF1ファンの目には新鮮に映る。間瀬氏が晩年を過ごした京都の地で、間瀬氏が遺した、もう二度と撮ることのできない貴重なF1写真を通じて、その歴史や文化に触れ、それぞれがF1の新たな魅力を見つけることだろう。

写真展『The EYES』は10時から18時まで開催。入場料は1,000円、大中高生は600円、小学生以下は無料。6月7日(日)14時まで開催されている。

過去を語りたがらない片山右京氏が、過去を語ったこの日、60歳を過ぎたその目は、今も輝いていた。

もし間瀬氏がこの瞬間を撮影していたら、どんな目を撮っていただろうか。

京都文化博物館で開催された写真展『The EYES』に登壇した片山右京氏の目は輝いていた(C)TopNews.jp

ネルソン・ピケのヘルメットも展示(C)TopNews.jp

ネルソン・ピケのヘルメットも展示(C)TopNews.jp

間瀬明氏が使用したカメラも展示(C)TopNews.jp

間瀬明氏がF1の現場で収集したシールを1人1枚限定でプレゼント(C)TopNews.jp

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