・エネルギーマネージメントと安全性の改善を主眼としてマイアミGPよりレギュレーションが改正される
・内燃エンジンの出力引き上げも必要という声もある
・今回の改正に一定の評価はするものの、更なる改善の余地も残されている
F1の統括団体であるFIA(国際自動車連盟)は、4月20日に主要関係者全員が参加した会合を経て、物議を醸している2026年レギュレーションに対する一連の変更を正式に発表した。
FIAによれば、これらの改良はドライバーからのフィードバックやシーズン序盤のデータ、さらには広範な批判を踏まえてまとめられたもので、マイアミGPから導入される。主な焦点はエネルギーマネジメントと安全性の改善にある。
主な変更点としては、以下が挙げられる。
・最大エネルギー回生量の削減
・ピーク時の「※スーパークリップ」出力の引き上げ
・そしてレース中の※ブースト使用制限
これにより、極端な速度差の発生を抑える狙いがある。
※スーパークリップ:電力切れにより電動アシストが失われ、加速が低下し回生(発電)モードに入る状態。この際、エンジン出力の一部が充電に使われるため、さらに加速が鈍る
※ブースト(ブーストモード):常時使用可能な基本的な電動アシストによる加速モード
またFIAは、「1周あたりの最大スーパークリップ持続時間」を「2〜4秒程度」に抑えることを大きな目標としていると説明した。
さらに、危険な低速スタートを防ぐ新たな自動システムの導入や、雨天時に関する調整も含まれている。
FIAは今回の目的について、「オーバーテイクの機会や全体的なパフォーマンス特性を維持しつつ、過度な接近速度を低減すること」にあるとしている。
これは、今年の日本GPでハースのオリバー・ベアマンがアルピーヌのフランコ・コラピントを避けてクラッシュした事例を踏まえたもので、前方車両がスーパークリップによって失速する一方、後方車両は電動アシストを維持したままフルパワーで走行することで急激に接近し、回避が間に合わず追突リスクが高まるような危険な速度差を抑えることを意味している。
こうした速度差は電動アシストの有無によって生じるもので、今回の出力制御やエネルギーマネジメントの見直しにより、その差を緩和する狙いがある。
パドックの反応は概ね慎重ながらも一定の評価が見られる一方で、これらの変更だけで問題が完全に解決されるとの期待は低いようだ。
ドイツの自動車専門誌『Auto Motor und Sport』のトビアス・グリューナーは、次のように指摘している。
「マイアミ前に行われた調整は、あくまで第一歩に過ぎません。状況を明確に改善するためには、内燃エンジンの出力もさらに引き上げる必要があります」
またグリューナーは、そのような根本的な変更は2027年、あるいは2028年まで実現しない可能性があると付け加えた。
一方、オランダ紙『De Telegraaf』のジャーナリスト、エリック・ファン・ハーレンも、今回の変更の効果は限定的になる可能性があるとの見方を示している。特にマックス・フェルスタッペンのような強い批判者にとっては十分ではないとの認識を示した。
「現在導入されている小規模な変更では、彼の望みがかなうことはまだないでしょう」と述べた。
一方で、ウィリアムズF1のチーム代表ジェームス・ボウルズは今回の決定を歓迎している。
「これらは理にかなった変更ですし、ここ数週間でチーム、FIA、そしてF1が合意に至るまでに良い仕事をしてきたと言えます。今シーズンはすでに素晴らしいレースが見られていますが、常に改善を模索し続ける姿勢は重要です」と、X(旧Twitter)に投稿した。
マクラーレンF1のチーム代表アンドレア・ステラも、今回の協力的なプロセスを高く評価した。
「すべての関係者が示している責任感と協力の精神こそが、今この瞬間にF1が示すべき最良の対応だと思います」
ドライバーの観点から見ても、今回の技術的方向性はこれまでの提案とおおむね一致している。メルセデスのジョージ・ラッセルは以前、スーパークリップ出力の引き上げが重要な解決策であり、「明白な答え」だと指摘していた。
「これだけでも、※リフト・アンド・コーストを使わざるを得ない状況の多くを回避できます」とラッセルは語っている。
※リフト・アンド・コースト:コーナー手前でアクセルを放し、ブレーキを遅らせて惰性で走行する技術。
・ドライバーは電力切れによるスピード低下を防ぐため、リフト・アンド・コーストなどでエネルギー回生を行い、電力を管理している。
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