F1、戦略的なリタイアが増加?

2012年04月28日(土)12:26 pm

バーレーンGP決勝において、2つのチームが現在のギアボックスの連続使用に関するルールの抜け穴をうまく利用するため、わざと自分たちのクルマをリタイアさせたとドイツの専門誌が報じている。

バーレーンGPでは、ウィリアムズのパストール・マルドナードが中国GP後に発見された故障のためにギアボックスを交換したことから、5グリッド降格のペナルティーを受けている。コスト削減を目的としてF1が定めているルールによれば、1つのギアボックスを5レース連続で使用することが求められており、それに満たない時点で交換するとペナルティーの対象となるためだ。

しかし、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』は、いくつかのギアボックストラブルは「戦略的理由によって偽装された可能性がある」と書いている。

では、なぜチームはそのようなことをするのだろうか?

マルドナードのチームメートであるブルーノ・セナは、バーレーンGP決勝において終始ポイント圏外で苦しい戦いを強いられていたが、ウィリアムズはセナをリタイアさせることを決断している。

セナはこのときのことを次のように語っていた。

「ブレーキペダルにかなりのバイブレーション(振動)を感じ始めた。それで、事故を起こすリスクを避けるためにピットへ戻る(リタイア)という決定がされたんだ」

しかし、『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』はこれについて、「彼(セナ)のリタイアは戦術だった」と報じた。

その記事によれば、バーレーンGPの前に、ウィリアムズの両方のクルマに製造上の欠陥が見つかっていたものの、スペインGP(5月13日決勝)までは改修が予定されていなかったという。

前述のギアボックスの連続使用に関するルールには、もしレースをリタイアした場合、たとえギアボックスをそこで交換しても次のレースでグリッド降格のペナルティーを受けることはないという抜け穴がある。

さらに、マクラーレンのジェンソン・バトンもバーレーンGPでチェッカーフラッグを見ることなくリタイアに終わっている。

バトンはレース終盤にポイント圏内を走行していたものの、タイヤのパンクによりピットインせざるを得なかった。このパンクは、壊れた排気管からの熱い排気ガスが直接タイヤに吹き付けられていたことが原因だとみられる。

しかし、これについても『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』は次のように書いている。

「その1周後に、セクター2でそれまでの自己ベストタイムを更新しておきながらも、バトンはピットに戻ってリタイアした」

マクラーレンの公式発表によれば、そのリタイアはディファレンシャルギアに問題が発生したためだったという。しかし、『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』は、バトンのリタイアもセナと同じように「おそらくは戦術的理由によるものだ」とし、次のように続けている。

「バトンは(その時点で)13番手に下がっており、もうポイントを獲得できる望みはなかったからだ」

バーレーンGPでリタイアしたことにより、バトンはペナルティーを受けることなく、バルセロナで行われるスペインGPで新品のギアボックスを装着することができることになる。

これによってバトンは得をすることになると『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』の記者ミハエル・シュミットは主張している。マクラーレンはクルマのリア部分の改良を計画しているが、それはギアボックスの形状にも変更が求められるものだからだ。

もしバーレーンで戦術的なリタイアをしなかったとしたら、バトンはスペインGPの次に行われるモナコGP(5月27日決勝)まで新しいギアボックスを使うことができなかったはずだ。

一方、メルセデスAMGのミハエル・シューマッハもバーレーンGPではDRS(空気抵抗低減システム/可変リアウイング)の不調のために予選で18番手と出遅れたこともあり、決勝の前に意図的にギアボックスを交換し、5グリッド降格のペナルティーを受けている。

これにより、シューマッハはスペインGPでは新品のギアボックスを使うことができるようになるが、『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』によれば、メルセデスAMGの新しいギアボックスは新しく設計されたカーボン製の筺体(きょうたい)によってこれまでよりも軽量化されているため、性能低下が著しいとされるピレリタイヤへの対応面で改善がみられることになるはずだという。

しかし、メルセデスAMGのもう1人のドライバーであるニコ・ロズベルグは、その新しいギアボックスを使うためにはモナコGPまで待たなくてはならないことになる。

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