先週末のイタリアGPで、ポールポジションからトップを快走し、危なげなく優勝したルイス・ハミルトン(マクラーレン)の、マクラーレン離脱のうわさは消えることがなかった。しかし、マクラーレンのチーム代表を務めるマーティン・ウィットマーシュは、ハミルトン離脱に備えた2013年以降の「代案」は存在しないとの主張を続けた。
ウィットマーシュの主張に反して、報道陣はすでに、ハミルトンの後任となるドライバーに興味を示している。最新の報道で候補に挙がったのは、イタリアGPを8位でゴールしたポール・ディ・レスタ(フォース・インディア)と、2009年シーズンまでマクラーレンに所属していたヘイキ・コバライネン(ケーターハム)の2人だ。
もちろん、マクラーレンにとっての最優先はハミルトンとの契約更新。ハミルトンとの契約更新について、1998年以来となるチーム部門のチャンピオン獲得を目指すウィットマーシュは次のように語っている。
「シンガポールGP(9月23日決勝)までには、なんらかの話し合いをするものと思う」
マクラーレンは一貫してハミルトンとの契約継続を望んでいるが、2013年からジェンソン・バトンのチームメートとなるドライバーを探す時間はまだ残されているとも認めた。それでも、ハミルトンがマクラーレンの2013年型マシンの情報を手土産にライバルチームへ移籍するとの説は、ウィットマーシュが完全否定する。
「クルマの開発は技術者やエンジニア、設計者の仕事だよ」
「ドライバーは、実際にクルマに乗るとき以外は開発にかかわらないものだ」
対外的には状況を心配するそぶりを見せないウィットマーシュは、元F1チームオーナーのエディ・ジョーダンが強固に主張する、ミハエル・シューマッハ(メルセデスAMG)の後がまとしてハミルトンがメルセデスAMG入りするという話は「ファンタジー」だと切り捨てる。
「パドックは狭いのだから、ハミルトンのマネジメント陣もそれなりの配慮をしなければならないことは想像がつくだろう。私もそんなにバカじゃないよ」
しかし、水面下でマクラーレン内部に動きがあるようだ。それを感じさせるもののひとつが、ハミルトンのチームメートであるバトンが、チームの指示でチームメート間の順位を決める「チームオーダー」に屈してチームメートの後じんを拝すことを公然と拒否したことだ。
「ただコースに出てペダルを踏んでチームメートの後ろをぐるぐる走るつもりはない」
バトンのこの言葉に、ウィットマーシュも同意している。
「今のところ、チーム内の力関係はうまく動いている。そのうち、アプローチ方法を変える必要も出てくるだろう」
ハミルトンが本当にマクラーレンを離れるとすれば、その最も有力な公認候補は前述のディ・レスタだろう。スコットランド出身のディ・レスタが加わるのであれば、英国系チームであるマクラーレンの「オール・ブリティッシュ」の布陣に変わりはない。そして、マネジャーとしてディ・レスタのキャリアを支えるリチャード・ゴダードは、バトンのマネジャーでもあるのだ。
マクラーレンがディ・レスタをドライバー候補として検討しているか聞かれたバトンは、『Telegraph(テレグラフ)』にこう語っている。「僕が話すことじゃないよ。ディ・レスタのマネジメント側が話すことさ」
さらに『Daily Mail(デイリー・メール)』は、2008年、2009年とハミルトンのチームメートとしてマクラーレンに所属していたコバライネンもまた、ハミルトンの後任候補の1人だと報じた。そして、かつてマクラーレンで活躍したもう1人のフィンランド人ドライバー、キミ・ライコネン(ロータス)の名も挙がっている。
その一方で、コバライネンとライコネンの故郷フィンランドの『MTV』でコメンテーターを務めるオスカリ・サーリは、注目すべきはウィリアムズのサードドライバーで、同じくフィンランド出身のバルデリ・ボッタスほうだと話した。
ボッタスについてサーリは、「ウィリアムズがボッタスを放出したら、ほかのチームが彼を引き入れようと手を伸ばすだろうね」と語っている。