レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表が、「ジュニアドライバー」の角田裕毅(RB)を「シーズン終了後のタイヤテストに乗せる」と明言した。この発言の意図を深掘りしてみたい。
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■どういう意図?
「シーズン後のタイヤテストに乗せる」とはどういうことなのだろうか?
パワーユニットを供給しているホンダ・レーシング(HRC)は、角田裕毅をテストでもレッドブルに乗せるよう要求していた。今回、ホーナー代表は角田をプライベートテストで過去のマシンに乗せるのではなく、シーズン後のタイヤテストに乗せると明言した。つまり、最新型RB20をドライブすることになる。
■角田にとってのポジティブ
角田にとってのポジティブな点は、4年目にしてレッドブルへの昇格の可能性を高めるテストの機会をやっと与えられたことだ。最大の支援者であるホンダは、角田がテストでレッドブルに乗るよう強く要求しており、彼の速さはすでに認められている。この経験が、角田の将来にプラスに働く可能性がある。
ホーナー代表が語ったように、マシンを作っていく上で必須となるエンジニアとの円滑なコミュニケーションや良いフィードバックを与えることが求められる。あとは落ち着いて冷静に走り、良い結果を残し続けることが重要だろう。
■角田にとってのネガティブ
一方、ネガティブな点は、角田が最新型マシンに乗れるものの、タイヤテストではタイヤの選択権がピレリにあり、セッティングにも制限があるということだ。
セッティングに制限があるということは、好みのセッティングに仕上げることができないため、コース上でのパフォーマンスを示すのが難しくなる。したがって、「コミュニケーション能力」と「タイヤのフィードバック能力」は確認できるかもしれないが、「コース上での速さ」はチームの基準セッティングが角田に合うかどうかに依存しそうだ。
そのまま乗って驚くような速さを見せつつ、エンジニアが高く評価するほどのフィードバック能力を見せなければ、ただの想い出作りになってしまう。当然、クラッシュは禁物だ。ホンダは想い出作りをさせるためだけに角田のテストを要求したわけではないだろう。
さらに、セルジオ・ペレスのみならず、王者マックス・フェルスタッペンですら苦戦している扱いにくい今季型マシンでテストを行うのは難しい挑戦になる。すなわち、フェルスタッペンのようにすぐに乗りこなして限界まで引き出す能力が求められる。
■プライベートテストに乗せてもらいたい
願わくば、気候の良いシーズン中にプライベートテストを実施し、レッドブルが圧倒的な強さを誇っていた2年落ちのマシンを走らせ、その後に扱いにくい最新型を走らせてもらいたいところだ。
しかし、シーズンも終盤に差し掛かり、3連戦が2回という厳しいスケジュールの中、プライベートテストを実施するにはタイミングが遅すぎたかもしれない。
■角田裕毅が昇格するには?
角田裕毅がレッドブル昇格を果たすには、ホーナー代表とヘルムート・マルコ博士に「角田を乗せたい!」と言わせるほどのシーズン中の結果、そして今回のようにわずかなチャンスを得たときにすぐに速さを引き出す能力が求められる。また、高いコミュニケーション能力とフィードバック能力も必要だ。
ホーナー代表とマルコ博士は元ドライバーでもあり、ドライバーの能力を見いだす目利き力に優れている。彼らが求めるのはチャンピオンドライバーであり、そのため精神的にもチャンピオン争いに耐えられるほどの厳しい要求を若手にも出すことで有名だ。