2026年F1は奇妙な音に…メルセデスPU責任者が語る“仕組み”「ブレーキ中でも“アクセル全開音”が鳴り響く」

2025年07月25日（金）6:00 am

・メルセデスが2026年PUで「全く新しいサウンド体験」を予告

・発電のため減速中も高回転に、異音発生の可能性を示唆

・MGU-H廃止でも音量増加は限定的、懐かしさとは異なる音に

メルセデスF1エンジン部門を率いるハイウェル・トーマスは、2026年から導入される次世代パワーユニット（PU）について、「ファンはまったく新しい音の雰囲気に慣れる必要がある」と語った。

新PUでは1.6リッターV6ターボという基本形式は維持されるものの、MGU-H（排熱回生システム）が廃止される。それにより、観客が最も強く変化を感じるのはサウンド──特に通常では“静かなはず”の場面になるかもしれない。

「これまでは、ブレーキングやコーナリング中は回転数が低く、音も小さかった」とトーマスは説明。「しかし今後は、加速していなくてもエンジン回転数と音量が大きくなる」

その理由は、MGU-Hを失ったPUで電力需要を満たすための“苦肉の策”にある。

「ブレーキ回生だけでは新PUが必要とする電力には到底足りない。そこで我々は、ブレーキング中やコーナリング中にエンジンをフルスロットル状態に切り替えて、そのエネルギーで発電し、バッテリーに直接供給する仕組みを採用した」とトーマス。

「つまり、ラップ中のある部分では、エンジンが“発電機”のように機能することになる」

その結果、観客は低速セクションや減速中でも高回転のエンジン音を耳にすることになり、「最初は違和感を覚えるだろう」とトーマスは認めている。

MGU-H廃止によって「より大きく、より伝統的なエンジン音になるのでは」と期待する声もあるが、トーマスはその見方に慎重だ。

「音が大きくなるのはMGU-Hがなくなったからというより、ターボの仕様が変わったため。電動モーターを駆動する必要がなくなったことで排気の背圧が減り、そのぶん少し音が大きくなる」

「ただし、使用できる燃料の量は現行の4分の3に制限されており、試験ベンチでは現行PUとほぼ同じ騒音レベルだった」

2026年仕様のメルセデス製パワーユニットは、マクラーレン、ウィリアムズ、アルピーヌ、そしてメルセデス・ワークスに供給される予定で、英ブリックスワースの拠点では生産準備が始まっているという。