・ラッセルとアントネッリの緊張関係がさらに高まる
・ウォルフ代表はチーム内バトルの管理に苦心、話し合いへ
・アントネッリ優勢、心理面で主導権を握りつつあるとの見方も
メルセデスF1代表のトト・ウォルフが、ジョージ・ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリの間で高まる緊張関係の抑制に追われている。F1タイトル争いが新たな局面を迎えるなか、チーム内で再び激しい火花が散ったためだ。
ライバル関係が一気に激化したのはモントリオールだった。それまでの数戦で勢いをつかんでいたアントネッリは、ポールポジションから3連勝を飾り、その流れのままカナダGPに乗り込んできた。一方で、ラッセルもついに本来の速さを取り戻した。
ラッセルはカナダGPのスプリントで勝利、ポールポジションも獲得し、土曜日まで完璧な週末を送っていた。しかし日曜日の決勝では状況が一転。レースでは19歳のチームメイトであるアントネッリと激しいホイール・トゥ・ホイールのバトルを繰り広げ、ラッセルはリードし続けたが、突然パワーユニットの故障に見舞われ痛恨のリタイアを喫した。ラッセルは大量ポイント獲得のチャンスを逃しただけでなく、4連勝を飾ったアントネッリとのポイント差は拡大してしまった。
ランキング2位のラッセルにとって、大きくポイント差を縮めるはずだった週末は、逆にチャンピオンシップでの差が広がる結果となってしまった。
ラッセルは現在、アントネッリに43ポイント差をつけられている。
この失速は、メルセデスにとって極めて繊細なタイミングで起きた。すでに両ドライバーの間では、コース上で接触寸前の場面や感情的な反応が何度かあり、ウォルフ代表が公の場で介入せざるを得ない状況になっていた。
日曜日のバトル後、ウォルフ代表は次のように認めた。
「何周にもわたって本当に緊張感がありました。両ドライバー共に、少し抑えてほしいと思っていましたが、そうはなりませんでした。それがレーシングドライバーというものです」
ウォルフ代表は、そのバトルが時に行き過ぎていたことも認めた。
「許容範囲ギリギリでした」とウォルフ代表は笑みを浮かべながら語った。
「おそらく10%ほど抑えて走るべきだったかもしれません」
ますます不安定さを増すライバル関係をどう管理するかが、今後メルセデスにとって最大の内部課題となっている。
「まずは感情を冷ます必要があります」とウォルフ代表は認めた。
「ジョージにも、この件から精神的に立ち直ってもらいたいと思っています。チーム内で話し合います。私たちは常に、ドライバーに対して透明性を持ちたいと考えています」
興味深いことに、レース後のアントネッリ自身はラッセルよりも慎重な口ぶりで、今後はもう少し明確なルール設定を望んでいるようにも映った。
アントネッリは「厳しい戦いでした」と語った。
「何度か、少しギリギリだったかもしれません。でも、僕たちはお互いに攻め合っていました」
一方、ラッセルはウォルフ代表に対し、今後も自由に戦わせてほしいと考えているようだ。失意のラッセルは、次のように主張した。
「僕たちはレースの仕方を分かっています。2人ともコントロールできていました」
その後、ウォルフ代表は、約10年前にメルセデスで起きたルイス・ハミルトン対ニコ・ロズベルグの“内紛”との比較を打ち消そうと、フランス局『Canal Plus』に対し、「ニコとルイスの時とは違いました」と語っている。
「ただ、レースへの向き合い方をどうするか分析するうえで、とても良い機会になりました」
そして、ウォルフ代表は、両ドライバーに3つの選択肢を示したと説明した。
「1つ目は、相手のマシンが別チームのクルマであるかのように振る舞うことです。2つ目は、ストレートでしかオーバーテイクしない“ミッキーマウス”のようなレースにすることです」
「しかし、それら2つとも望んでいるわけではありません。3つ目は、ドライバーたちを信頼するというものです。私たちは3つ目の方向へ進もうとしています」
元F1ドライバーのラルフ・シューマッハは、アントネッリがメルセデス内部で心理的に主導権を握りつつあると見ている。
「壮絶な一騎打ちでした。しかし、キミは極めて冷静に対応していました。彼は本当に何度も何度もジョージをミスに追い込んでいました」とシューマッハはドイツメディア『Sky Deutschland』に語った。
「キミは今、次の段階へ進んでいます。前へ出て、チームを率いようとしているのです。もうジョージに息つく暇を与えていません」
シューマッハはさらに、ラッセルがそのプレッシャーに対応できるかどうかにさえ疑問を呈した。
「ジョージは信じられないほど速いドライバーです。しかし、彼はプレッシャーへの対処がうまくありません」
ラッセル自身もレース後、ほとんど諦めにも近い様子を見せ、チャンピオンシップのプレッシャーはアントネッリ側にあると公然と語った。
「今は、彼が落とすかどうかです。神様は、僕をこの戦いに入れたくないようです」とラッセルは語った。
そのうえでラッセルは、シーズン序盤から続く一連の不運を挙げた。
「日本でのセーフティカーのタイミング。中国のQ3での不運。そして今回、僕が主導権を握っていた時の不運です」
それでもラッセルは、失うものは何もないという気持ちで、今後は攻めていくつもりだと強調した。
「プレッシャーはなくなりました。毎レースを楽しむつもりです。毎レースで勝ちにいきます。僕には失うものがありません」
2度のF1ワールドチャンピオンであるエマーソン・フィッティパルディは、この対立は避けられないものだったと考えている。
フィッティパルディはイタリア紙『La Gazzetta dello Sport』に対し、次のように語った。
「タイトルを獲れるクルマを持っていると分かっているドライバーが2人いれば、そのチャンスを逃したくないと思うものです。ラッセルは、これが自分にとって大きなチャンスだと分かっています。一方で、キミにとってはすべてがまだ新しいのです」
一方、シューマッハは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が2027年にメルセデスへ移籍するという憶測についても否定的な見方を示した。
「彼のためのシートが、メルセデスにあるとは思いません。なぜトト・ウォルフが、自分の秘蔵っ子の隣にフェルスタッペンを連れてくるのでしょうか。そのリスクはあまりにも大きすぎます。」
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