レッドブルのイザック・ハジャーの手首は、いつになればF1マシンを運転できる状態まで回復するのか。
ハジャーは夏休み中のトレーニングで手首を負傷し、オランダGP、イタリアGP、スペインGPを欠場した。当初は軽度の亀裂骨折と伝えられていたが、腱も損傷している可能性が取り沙汰されている。
そこで、公開されている医学資料をもとに、手首の亀裂骨折と腱損傷から競技に復帰するまでの一般的な期間を調べた。
ただし、ハジャーが骨折した部位や腱損傷の有無、その程度は正式に公表されていない。以下はハジャー本人の診断結果ではなく、あくまで医学的な一般論となる。
医学誌『Sports Health』に掲載されたスポーツ選手の橈骨遠位端骨折に関する総説では、多くの選手が受傷から6〜9週間で競技に復帰している。
ただし、骨がつくことと、F1マシンを問題なく運転できることは同じではない。
英国の医療機関「ロイヤル・コーンウォール病院NHSトラスト」は、手首骨折後のスポーツや重い物を持つ動作を少なくとも12週間は避けるよう案内している。
骨の位置がずれていない亀裂骨折で回復が順調であれば、6〜9週間が競技復帰を検討できるひとつの目安となる。ただし、競技の特性や骨折の部位、治療方法によって復帰時期は異なり、痛みや可動域、握力が十分に戻っていなければ、さらに時間が必要になる。
問題は「腱も損傷している可能性がある」という報道だ。
ひとくちに腱損傷といっても、軽度の損傷から部分断裂、完全断裂まで幅があり、必要な治療と回復期間は大きく異なる。
軽度で手術を必要としない場合は、固定やリハビリによって比較的早く回復する可能性がある。一方、断裂した腱を手術で修復した場合は、回復が長期化する。
英国手外科学会によると、手術で修復した腱が十分な強度を取り戻すまでには約3カ月かかり、動きの改善には最大6カ月を要する場合がある。英国の国民保健サービス(NHS)も、手術後に腱を再び使い始められるまで最大12週間かかるとしている。
骨折と腱損傷の回復期間を単純に足し合わせるわけではないが、両方を負傷している場合は、回復の遅い側が復帰時期を左右することになる。
F1ドライバーの復帰には、日常生活で手を使える状態以上の回復が求められる。
ドライバーはステアリングを握りながら、高速で細かな修正操作を繰り返す。路面からの振動や縁石を通過した際の衝撃、急激なカウンターステア※による負荷も手首に伝わる。
※カウンターステア:コーナー旋回中に後輪が滑って車体後部が外側へ流れた際、スピンを防ぐために旋回方向とは逆側へステアリングを切る操作
痛みを抱えたまま復帰すれば、操作の正確性が低下するだけでなく、骨や腱を再び傷め、欠場がさらに長期化する危険もある。
レッドブルがハジャーをシミュレーターに乗せ、「実際の走行に近い負荷」をかけて判断しようとしているのは、このためだ。
ハジャーが負傷した正確な日は明らかにされていないが、夏休み中の負傷であれば、アゼルバイジャンGPは受傷からおおむね5〜8週間後にあたる。
亀裂骨折だけで回復が順調に進んでいれば、スポーツ選手が復帰を検討し始める一般的な時期に入る可能性がある。一方、腱に部分断裂などの深刻な損傷があれば、バクーでの復帰は難しくなる。
医学的な一般論と現在公表されている情報を照らし合わせると、バクーでの復帰は不可能ではないものの、決して余裕のある日程ではない。
シミュレーターで痛みや握力、可動域に問題が出れば、レッドブルはハジャーの復帰を見送るとみられる。その場合はリアム・ローソンが引き続きレッドブルの代役を務め、角田裕毅もレーシングブルズから4戦連続で出場する可能性が高まる。
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