F1第2戦マレーシアGPの「マルチ21」騒動で最もダメージを受けたのは、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)のイメージのようだ。
これまで英国的ユーモアにあふれ、ビートルズをこよなく愛する“ナイスガイ”で通っていたベッテルの評判は、マレーシアGPでチームからの指示を無視し、チームメートのマーク・ウェバーがレースにおいてトップを走行するのは「ふさわしくない」と切り捨てて以来、一気に急降下している。
ジェンソン・バトン(マクラーレン)も「ベッテルは気楽な性格をしているように見えたから、あんなことを言ったなんて信じられない」と驚きを隠せない様子だ。
また、かつてマクラーレンで活躍した元F1ドライバーのジョン・ワトソンも、眉をひそめるようなベッテルの暴走ぶりに驚いている。『Telegraph(テレグラフ)』に「マレーシアではしきりに謝っていたのに、いまではそれを撤回し始めている」と語り、ベッテルの変わり様を「まるで、バンビがオオカミ男にひょう変してしまったようだ」と例えてみせた。
F1のコアなファンの中には、無慈悲で勝利至上主義を掲げるドライバーをあがめる者もいるが、ベッテルの「たちの悪さ」は見苦しかったとワトソンは述べた。
さらに、「わたしはある一定の人生観を持って、自分の人生を歩んできたつもりだ。ベッテルの振る舞いを見ていると、不愉快になる」と付け加えた。
ドライバーの中で最もタフな性格とされるフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)も、戦いから逃げることは決してないが、無慈悲にも限度があると考える。
「カシージャス(イケル・カシージャス)は、ゴールキーパーとしてレアル・マドリードに雇われている」
「彼が望んだところで、ストライカーとしてプレーさせてもらえることはないんだ」と中国でスペインの記者たちに話した。
元F1ドライバーのマルク・スレールは、今回のベッテルの一件が、ナイスガイでは勝てないという構図を示す良い例だと考える。
「中身の優れたドライバーがチャンピオンになれないのは残念だ」と『SID通信』に語った。
「例外はバトンかな」
「彼以外はみんな強いエゴを持っていて、ほかのドライバーには目もくれず、自分の目標に向かって突き進むからね」