19日(火)からスペインのバルセロナにあるカタルーニャ・サーキットで行われているF1合同テストで、ピレリの2013年型F1タイヤが話題を独占している。
口火を切ったのはマクラーレン新加入のセルジオ・ペレスだ。20日(水)の走行で最速タイムを記録したものの、とにかく摩耗の早いピレリタイヤに、ペレスは言葉もないといった様子だった。
スペイン『AS』紙は、次のようなコメントを伝えている。「もう何ていっていいか分からないよ。先が思いやられる。開幕戦までに事態が変わることを願うよ」
「何をやってもダメ。運転の才能だけではどうにもならない」
またペレスは、『Speed Week(スピード・ウィーク)』に次のように語っている。「驚いたよ。悪い意味でね」
「(路面の)低温がタイヤの減りに拍車をかけている。メルボルン(第1戦オーストラリアGP)ではマシになるのかもしれないが、この調子では7回とか10回ぐらいピットストップを繰り返しそうだよ」
記者がピットを移動してほかのドライバーに話を聞いても、返ってくる答えは似たようなものだ。タイヤが減ると路面にゴムの破片が散乱するものだが、バルセロナを走っていると避ける術もなく、まるでゴム弾(騒乱鎮圧に警察などが用いる弾丸)で打たれたような衝撃を感じると、ダニエル・リチャルド(トロ・ロッソ)は次のように語る。
「はっきりしたことはいえないけど、こんなタイヤはピレリが意図したものだろうか?」
ドイツ『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』誌は、メルセデス代表ロス・ブラウンの、次のようなコメントを紹介している。「摩耗の度合いは、昨年に比べると倍だね」
フォース・インディアから今年ザウバーに移籍したニコ・ヒュルケンベルグは、次のように語っている。「タイヤがすべてに大きな影響を与えているよ。1周しただけでグリップ(接地力)はなくなってしまう」
このように、タイヤをめぐる状況はどのチームも一緒だ。開幕戦オーストラリアGP(3月17日決勝)を前に、マシンをテストできるのは今週と来週のテスト(2月28日~3月3日)だけとなる。セットアップを悟られたりマシンの造作を見られたりしないよう、各チームは、かつてないほど機密の保持に必死だ。
とりわけレッドブルのガードが固い。新車RB9がノーズからガレージに押されて入ると、すかさずメカニックがマシンに覆いを被せる。
ドイツ『Bild(ビルト)』紙は、マクラーレンから供給されたソフトウェアに起因するレッドブルのトラブルは“ハッカー”もしくは“ウィルス”の仕業ではと、疑問の目を向ける。
レッドブルのライバルたちについてチームのアドバイザー、ヘルムート・マルコは「マクラーレンとロータスの調子がベストに見えるね」と語っている。
レースにはクルマの信頼性も重要だ。20日(水)、フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)に起きたトラブルについて、チームでは、エキゾースト(排気)の設計に問題があったのではないかとみている。
また、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)とキミ・ライコネン(ロータス)の走行もトラブルが多発した。マシンの修理中に何をしていたか問われたライコネンは、彼らしく簡潔に、「昼寝さ」と答えている。