ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)が、フェラーリ入りを虎視眈々(こしたんたん)と狙っているようだ。才能を高く評価されているヒュルケンベルグが2013年シーズンを前に昨年まで所属していたフォース・インディアから同じ中団チームのザウバーへ移籍を発表した際、それを「フェラーリ入りへの前準備」ととらえた者は少なくなかった。
現に、フォース・インディアはメルセデス製のエンジンを使用しているが、ザウバーのエンジン提供元がフェラーリであるため、両者の政治的つながりは強固だ。
ヒュルケンベルグの移籍を受け、フェラーリのルカ・ディ・モンテゼモーロ会長は「ヒュルケンベルグがザウバーで私どものエンジンを使い、どのような走りを見せるのか非常に興味がある」と話していた。
今シーズン、フェラーリ製エンジンと共に臨んだヒュルケンベルグのすべり出しは複雑だ。一貫してチームメートのエステバン・グティエレスより強い輝きを放ち、チームから称賛を得ているものの、今季のクルマC32は苦戦を強いられている。
フォース・インディアから移籍してきた際に、この現状を予想していたかとスペインの『El Confidencial(エル・コンフィデンシアル)』に聞かれたヒュルケンベルグは、「ノー」と答えた。
「僕たちは予想より後れを取っているし、目指していた結果も出せていない」
また、フェラーリ入りへの道筋が順調かに関しては、「分からない」と打ち明け、次のように続けた。「それはフェラーリに聞いてみるといいよ」
「まだシーズンは始まったばかりだけど、もう一度レースで優勝したり挑戦したりしてみたい。そしていつかはチャンピオンになりたい」
「そのためには、ビッグチームに行く必要がある。将来には未知の可能性が広がっているから、いま手にしているクルマですべてのレースを全力で戦う必要がある」と付け加えた。
主なスポンサーを持っていないにもかかわらず、中団チームのドライバーを務めるヒュルケンベルグは、F1パドックの中でも極めてまれな存在である。過去に一度、シートを喪失したこともあったが、見事復帰してみせた。
ウィリアムズからF1デビューを果たした2010年シーズンでは、最終戦でポールポジションを獲得する活躍を見せたが、シーズン終了後にチームから放出されてしまった。その後、フォース・インディアのリザーブドライバーを経て、2012年に再びレースドライバーの座を手にした。
ヒュルケンベルグは、「(レースドライバーとしての)3年間で、3つのチームを渡り歩き、たくさんの変化を経験してきた。もう嫌というほどね」と言ってヒュルケンベルグは笑って見せた。
「ウィリアムズで起きたことには失望した。話し合いも何もなく、僕はチームから放出された。良いシーズンを送ったのに、ほかの理由でシートを失ったんだ」
「とにかく、もう過ぎたことだし、F1キャリアは人それぞれだからね。ただ、僕のはちょっと慌ただしいね」