・現行のF1レギュレーションの改正とともに、エンジンへの回帰を求めるマルコ博士
・エネルギーマネジメントに重きを置きすぎた結果、ソフトウェア開発の争いになっているとマルコ博士は現行のF1を批判
・ロズベルグはコース上でのオーバーテイクこそが最も重要だと述べ、今シーズンのF1を一概に否定する立場は取っていない
長年レッドブルF1の顧問を務めてきたヘルムート・マルコ博士は、F1が2026年レギュレーションの「不完全さ」に早急に対処すべきだと述べるとともに、F1の方向性が再び従来型エンジンへと回帰しつつあるとの見方を示した。
4月に行われている危機協議の最中、オーストリアの公共放送『ORF』の取材に応じたマルコ博士は、現行規則が当初とは大きく異なる前提のもとで策定されたものだと説明した。
「レギュレーション策定時には、いくつか見落とされた点がありました。当時は電気自動車が唯一の選択肢だという考えが主流だったことを忘れてはなりません。
しかし、その後状況は大きく変わりました。CO2を排出しない新燃料の登場によって、エンジンは環境に優しい形で復活を遂げているのです」
こうした中長期的な方向性の変化を認めつつも、マルコ博士はまず現行レギュレーションの問題点の是正が最優先だと強調する。
「今は、この“不完全”なレギュレーションの欠点を解消することに全力を注ぐべきです。
理論上は電動パワートレインと内燃エンジンを50対50で組み合わせるというコンセプトは非常に魅力的に聞こえますが、実際にはうまく機能していません。バッテリーの充電が必要ですが、サーキット上には十分な充電区間が存在しないのですから」
またマルコ博士は、先日の事例を踏まえ、安全面への懸念も指摘した。
「マシン間の速度差は時速50kmにも達しました。まるで前方のマシンが止まっているかのように感じられる状況であり、こうした事態は避けるべきです」
マルコ博士はさらに、現在のエネルギーマネジメント重視の考え方はF1の本質とは根本的に合致しないと指摘した。
「エネルギー管理に優れた者が有利になるというルイス・ハミルトンの指摘は正しいと思います。しかし、それは“最速のドライバーが最速のマシンで勝つ”というF1の本質からはかけ離れています。
F1は、他より優れたソフトウェアを開発したエンジニアによって勝敗が決まるべきものではありません。
一方のドライバーはバッテリーがフル充電で、もう一方はバッテリーの残量がないというような状況で生まれるオーバーテイクは、本当の意味でのオーバーテイクとは言えません。ただ追い越しただけです。これは本来のF1のあるべき姿ではありません」
一方で、この問題に対する見方は様々だ。
2016年のF1チャンピオンであるニコ・ロズベルグは、『ブルームバーグ』の取材に対し、現在のF1に違和感を持ちつつも、冷静な姿勢を見せている。
「画面越しに見ている多くの視聴者にとって奇妙に映るのは理解できます。ファンからすれば、世界最速のレーシングカーなのだから、常に全開で走っているべきだと感じるでしょう。
ただ、私個人としては、ドライバー同士の素晴らしいバトルが見られるのであれば、それで良いと考えています。それが最も重要なことですから」と述べた。
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