ラッセル、2サイズ小さい靴から始まったメルセデス100戦 「次の100戦へ」初のF1王座を狙う

2026年08月12日(水)12:00 pm

記事要約


・ハミルトンの代役として、体格に合わないマシンで臨んだ2020年サヒールGP

・初優勝とシンガポールでの雪辱など、メルセデスでの転機を回顧

・アントネッリとの争いの中でも、王座への意欲と2027年残留を強調


メルセデスのジョージ・ラッセルは、同チームでの通算100戦目をバルセロナ・カタルーニャGPで迎えた。

この節目を機に、ルイス・ハミルトンの代役として急きょ出場した初戦やF1初優勝、苦い失敗を乗り越えてつかんだ雪辱の勝利など、これまでの歩みを振り返った。

■2サイズ小さい靴で臨んだメルセデス初戦

ラッセルが初めてメルセデスの一員としてF1に出場したのは、同チームへ正式加入した2022年ではない。

2020年のサヒールGPで、新型コロナウイルスに感染したハミルトンの代役を務めたのが始まりだった。

当時ウィリアムズに所属していたラッセルは、ハミルトンとバルテリ・ボッタスに合わせて作られたマシンに乗るため、普段より2サイズ小さいレーシングシューズを履いたという。

「このマシンはルイスとバルテリに合わせて作られていました。2人は僕よりかなり背が低く、足も小さいので、乗り込むために2サイズ小さい靴を履かなければなりませんでした。とても痛かったですが、本当に忘れられない経験です」

ラッセルは2020年サヒールGPのフリー走行1回目と2回目でトップタイムを記録し、予選ではボッタスにわずかな差でポールポジションを譲った。

決勝では大半の周回をリードしたものの、ピット作業の混乱とタイヤのパンクにより、目前だった勝利を逃した。

それでも、決勝でボッタスをアウト側から追い抜いた場面について、「メルセデスでの将来にとって重要なオーバーテイクだったと思います」と振り返っている。

■大事故で救助を優先した「人間としての気持ち」

メルセデスへ正式加入した2022年のイギリスGPでは、スタート直後に周冠宇と接触した。

周のマシンは横転し、バリアを越えてフェンスに衝突する大事故となった。

ラッセルはマシンを降りると、救助を手伝うため事故現場へ走った。

「レースを続けなければという本能もありましたが、すぐに人間としての気持ちが勝りました。あの瞬間は生死に関わる状況だと感じましたし、僕は何をすべきか分かっていました」

同じ年のサンパウロGPでは、終盤にハミルトンの追撃を抑え、F1初優勝を達成した。

レース後に家族とビデオ通話をしたというラッセルは、周囲が自分の勝利を喜ぶ姿を見て、初優勝の重みを改めて実感したと振り返っている。

■2023年の悪夢から2年後に雪辱

ラッセルの歩みは、成功だけではなかった。

2023年のシンガポールGPでは、勝利を争う中、最終ラップでウォールへ接触し、目前だった表彰台を失った。

しかし、2年後の同じコースでは、マックス・フェルスタッペンを抑えてポールポジションを獲得し、優勝を飾った。

「ポールポジションを獲得した予選ラップを見返したとき、数年前にクラッシュしたウォールにどれほど近づいていたのか、とても気になりました。あのクラッシュを意識から外すよう心がけていました。実際にはウォールから数ミリのところを走っていて、過去のクラッシュにあまり影響されていなかったと分かり、大きな誇りを感じました」

ラッセルにとって、2025年の優勝は、過去の失敗を乗り越えたことを証明するものとなった。

■「次の100戦へ」王座への意欲は変わらず

ラッセルは、自身が若手だった頃から支えてくれたメルセデスF1代表のトト・ウォルフとの関係について、12年にわたり、成功も苦しい時期もともに経験してきたと語った。

2026年は開幕戦で優勝したものの、その後は不運やトラブルが重なった。その一方で、チームメイトのアンドレア・キミ・アントネッリは躍進を遂げている。

それでも、ラッセルは、メルセデスを再び頂点へ戻すために戦ってきたことを誇りに思うと強調した。

「これからは次の100戦です。ここまで本当に長い旅でしたが、振り返ると昨日のことのように感じます。もっと多くの思い出をつくるのが待ちきれません」

2026年のタイトル争いでは、19歳のアントネッリがベルギーGP終了時点で首位に立ち、ラッセルに50ポイント差をつけている。

ラッセルはベルギーGPで電気系統の故障に見舞われた後、ハミルトンと接触して1周目でリタイアした。

元F1ドライバーのラルフ・シューマッハは、ラッセルがチームメイトからのプレッシャーによって「精神的に折れた」との見方を示した。

しかし、ラッセルは、チーム内の分裂やアントネッリ優遇説を、メディアが作り上げた「ばかげた話」と一蹴した。

ベルギーGP後にはアントネッリと一緒にブダペストへ移動し、機内で笑顔を見せる2人の写真をインスタグラムに投稿した。

ラッセルは、王座を争う相手になった今もアントネッリへの接し方は変わらず、かつてハミルトンに接していたのと同じように敬意を払っていると説明した。

ただし、ガレージを共有するチームメイトは、同時に「倒したい相手」でもあると強調している。

また、新世代マシンへの理解を深めている現段階では、情報を出し惜しみしている余裕はないとして、両者の間に秘密はないと明言した。

そして、今季の王座への望みも捨てていない。

ラッセルは、今季ほぼ半数のレースでポールポジションを獲得しながら、優勝に繋げられたのは2戦にとどまっていると振り返った。

それでも、その速さは自身にワールドチャンピオンになるだけの力があることを示しているとの自信を口にしている。

さらに、「僕は2027年もメルセデスで走ります」と残留を断言した。

ウォルフ代表もハンガリーGPで、2027年はラッセルとアントネッリを継続起用する見通しを示した。

アントネッリの台頭により、フェルスタッペン獲得は、もはや差し迫った課題ではないのかもしれないとの考えも明かしている。

ウォルフ代表がアントネッリを「F1のために育てられてきたドライバー」と高く評価する中、ラッセルは若きチームメイトと正面から競いながら、「次の100戦」で悲願のF1初王座を目指す。

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