アストンマーティン・ホンダが、ハンガリーGPで待望の大型アップグレードを投入した。予選前のインタビューでフェルナンド・アロンソは、その効果に対する過度な期待をけん制し、「2秒ものタイム差を一気に縮められるパッケージは存在しない」と冷静な見方を示していたが、予選では今季初のQ2進出を果たした。
チームは今回のアップグレードを開発計画の一段階と位置づけており、今後もシャシー開発を継続する方針である。さらに、改良版ホンダPUもオランダGPでレースデビューする予定となっている。
アストンマーティンF1の代表であるエイドリアン・ニューウェイが主導して開発した大規模アップグレードは、土壇場での追い込みを経てハンガリーGPへ持ち込まれた。フロントサスペンションを除き、ほぼすべてが変更されたとの噂も流れている。
しかし、アロンソは今回のアップグレードだけでチームの大きな遅れを一気に取り戻すことはできないと強調した。
「ベルギーGPは最も厳しいレースのひとつでした。僕たちの前を走っていたマシンとは、2.1秒差がありました。世界中どこを探しても、それだけのタイムを縮められるパッケージは存在しません。もし、1週間前のベルギーGPで今回のアップデート仕様を走らせていたとしても、おそらく順位は変わらなかったでしょう。その程度のものとして捉える必要があります」
アストンマーティンのチーフ・トラックサイド・オフィサーであるマイク・クラックも、新パーツが極めて遅い段階で到着したことを認めた。
「昨日(ハンガリーGP週末の水曜日)はガレージが空っぽでした。しかし、今は違います。フリー走行の朝までに2台とも準備を整えられるよう、作業を進めています」
クラックは、ハンガリーGPで投入する今回のパッケージが、プロジェクトの将来を決定づけるものではないとの考えも示した。
「いいえ、そうはなりません。私たちは皆、現実的に考えています。さらに多くのステップが必要ですし、これは開発戦略の一部に過ぎません。決定的なものとは考えていません。開発は、これからも続けていく必要があります」
アストンマーティン・ホンダは、大規模なシャシー開発とパワーユニット(PU)開発を分けて進めており、改良版ホンダPUは予定どおりオランダGPでレースデビューする見込みである。
その一方で、リザーブドライバーのジャック・クロフォードが、ハンガロリンクで実施される200kmのフィルミングデーで、新型PUの初走行を担当すると報じられている。この日は、アロンソの45歳の誕生日でもある。
ホンダのトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアである折原伸太郎氏は、改良版PUについて大幅な内部変更を施したことを明かした。
「燃焼室の形状に取り組んでいます。また、プレチャンバー※も変更しました。さらに、潤滑システムを見直すことで、フリクション(※エンジン内部の摩擦)の低減にも取り組んでいます」
※プレチャンバー:燃焼効率を高めるため、主燃焼室の前に設けられた小型の燃焼室。
一方で、50馬力向上との噂については否定した。
「そこまで到達できればと思いますが、かなり高い数字です。出力について詳細はお話しできませんが、私の印象では単なる噂です。実際の数字ではないと思います」
クラックは、シャシーを先に投入することで、コーナリングスピードの向上がPUの挙動にどのような影響を与えるかを、アストンマーティンとホンダが把握しやすくなると説明した。
「コーナリングスピードが高くなれば、エネルギーの使われ方が変わり、それによってPU全体のキャリブレーション※にも影響が及びます」
※キャリブレーション:パワーユニットの性能を最大限に引き出すための制御設定の最適化。
一方、アロンソは2027年も現役を続ける場合でも、他チームへ移籍する考えはないことを明言した。
「僕には契約があります。だから移籍することはありません」
これにより、アロンソに残された選択肢は、アストンマーティンでもう1シーズン戦うか、現役を引退するかという二択になりつつある。
「僕はまだ心身ともに元気ですし、モチベーションもあります。速さにも自信があります。ですが、自分がやっていることを楽しむ必要があります。コックピットに座っていても、以前F1マシンを走らせていた頃と同じようなアドレナリンは感じられません。それはチームの競争力の問題ではありません」
「問題は、F1が僕の人生に必要なアドレナリンを与えてくれるかどうか、それだけです」
その後の走行では、アストンマーティン・ホンダに一定の前進が見られた。前戦ベルギーGPのFP3ではトップから4秒以上の差をつけられていたが、ハンガリーGPのFP3では、その差を2秒台まで縮めた。
予選では、アロンソがQ1でトップから1.840秒差の16番手となり、今季初めてQ2へ進出。Q2ではトップから2.352秒差の16番手で敗退した。
サーキット特性やコンディションが異なるため単純な比較はできないものの、大型アップデート投入後、前戦よりトップとの差が縮まったことは確かだ。ただし、アロンソが予選前に語ったとおり、一度のアップグレードだけで上位争いに加わるまでには至っておらず、今後も継続的な開発が必要な状況に変わりはない。
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